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英国諸島巡航(第5部)



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1999年8月14日(土)エジンバラ(ロサイス)発1800・ドレスコード:カジュアル
朝起きると本船の船首側にプリンセス・クルーズの「パシフィック・プリンセス」が出船に接岸していた。
PO系のプリンセス・クルーズは99年、日本(三菱重工業)に11万トン型クルーズ船2隻の建造を契約した。クリスタル・シンフォニーと飛鳥の建造実績が評価されたのであろう。今から楽しみである。
昨夜帰船したときには居なかったから、夜中に入港したものと見える。今日、我々はセント・アンドリュースへオプショナル・ツァーに出かけるので0815にギャラクシー・ラウンジに集合する。
セント・アンドリュースはゴルフ発祥の地として有名である。彼の有名なロイヤル・エインシェント・ゴルフ・クラブのほかにブリティッシュ・ゴルフ・ミュージアムもあることは知っていたが、1410年に創設された大学があるとは知らなかった。
今日はのんびりとスコットランドの自然を満喫することにしよう。

クリスタル・シンフォニーとパシフィック・プリンセスの繋岸しているロサイスをあとにスコットランドの郊外に出掛ける。

バスはロサイスからファイフの田園地帯に入り、セントモナンス・アンストルーサ・クレイルなどの漁村を通って大聖堂・城・ゴルフコースで有名なセントアンドリュースへ行くことになっている。

中でもロイヤル・エインシェント・ゴルフ・クラブはゴルフの発祥地として有名である。
このクルーズを申し込んだあと、クリスタル・クルーズ社長のワッターズ社長とまわるゴルフの案内を貰ったことを思い出した。

バスはやっとセントアンドリュースの町に着いた。

海辺に開けたゴルフコースに隣接したゴルフミュージアムの前で下車し、早速入場してみる。英国ではロンドンをはじめ博物館が非常に多い。

しかも殆ど入場は無料である。
おもちゃ模型博物館・戦争博物館などまともな方で実に妙な博物館まである。

この博物館にはゴルフ発祥の頃のゴルフボール・クラブなどここでしか見られない珍しい展示品が多い。
もちろん史上有名なゴルファーのトロフィーなども陳列してある。

ここのマスコット、ゴルフ坊やも少し変ではあるが見方によってはかわいいキャラクターである。

彼の名前は失念した。このミュージアムのパンフレットのほかでも見たような気がするが今となっては思い出せない。

写真の後ろに見えるのは、当時の名人が木を選んで、手作りで仕上げたゴルフクラブである。
ゴルフボールも、今のディンプルが定着するまで様々なものが陳列されており珍しいコレクションであった。

このゴルフコース、海岸端であまり広いわけでも、起伏があるわけでもない。
人の手が入り過ぎていない、自然を満喫できるコースのように見かけた。
人気のコースと見えてこの日も人々がのどかな土曜日を楽んでいた。
近くには騎馬で散歩を楽しんでいる人も居て、イギリスの夏の週末であることを改めて感じた日であった。
イギリスの夏は自家用車にキャンピングカーを曳引してモーターウェイを走る車が非常に多い。
イギリスにはあまり大きな河はないが、産業革命当時、石炭や原材料を輸送するために開削された運河がいまレジャー用として整備され至る処でナローボートが賃貸出来るようになっている。
日本からも「ナローボート講習会」とか称してパックツァーが企画されたり」している。
バスに乗車するまで自由時間である。時間があるので少し歩いてみた。

15世紀初頭、ここに創設された大学があると聞いたのでそこを見学して、大聖堂跡まで行ってみた。
連れは同室のJと建設会社会長のTさんである。

大学はそれほど大きなキャンパスではないが、通路の掲示板を見ると夏休みの大学という雰囲気である。

Tさんは歩きながら昨今の大学事情やわが国の文部行政に対する意見などを話しておられた。

大学から100メートル程度で大聖堂跡に来た。

海に面して非常に大規模な聖堂が建立されていたものらしい。
いまここに残っているのは高い鐘楼のような塔と大きな伽藍の側壁である。

集合時間を見計らって歩き始めると突然の驟雨である。

我々は折畳み傘を持っていたので、一本をTさんに使ってもらって集合地点まで急いだが、足も肩も背中もすっかり濡れてしまった。イギリスではいきなり降り始めることがある。傘は手放せない。

雨は我々がバスにつく頃小降りになり、バスが発車する頃には上がってしまった。

船は6時にロサイスを出港してインバーゴードンに向かう。
船がロサイスを離岸し、フォース鉄橋に掛かる頃クリスタル・ダイニングに着席する。

夕食はネプチューン・ディナーとなっている。
今日のメニューの台紙には蟹や貝や海老がデザインされている。ダイニングに来るたびにどんな絵柄かなと楽しみにしている。

写真で判るように窓の外はまだ明るい。


デザートはヘッドウェイターのディディが卓側で見事な手捌きを見せてくれた。

彼は実に面白い。
面白いだけでなく素晴らしい才能がある。
いつも彼が居るだけでその場が明るくなる。

写真は、そのディディとテーブルメートのKさんである。

そしてディディのうしろからビデオカメラに微笑んでいるのは、いつも私がワインを頼んでいるソムリエである。

ビデオカメラを持っているのを見て、しきりにおどけた仕草をみせていたが、何時の間にかフライパンから30センチ程度の炎が上がった。
こちらがはらはらしているのに彼はこちらを向いてポーズを取っている。
余裕綽々である。
こうしている間もテーブルのゲストからの質問に答え、カメラにポーズをとる。
テーブルの周囲に気を配り、担当のウェイターやバスボーイがどこで何をしているかを把握している。

お客が、いま何を望んでいるかそれとなく先回りして察知してくれるので手を上げてウェイターを呼ぶ必要はない。

デザートが出来上がると、このテーブルを担当するウェイターのダレクがそれぞれのテーブルに持ってくる。

もちろんレディファーストだから、いつも私が最後である。

デュピティキャプテンと夕食をご一緒したときなどは例外で、普段はこのテーブルでは黒一点であった。クルーズメートのSさんやTさんは別テーブルだったからである。

ウェイターのダレクさんにもよくして貰った。

やっと私の番が回ってきた。

これが、リンゴとチョコレートとブランディの炎のデザートである。

食べるのが勿体無いようにしばらく眺めていた。

もっとも、炎の立っている状態のまま食べる人は居ないだろうが・・・。