基隆の客船ターミナルは大規模な設備であった。
内地から到着した千人もの乗客を、一等、二等、三等に区分けして、入国審査、検疫、所持品検査などを行う間、ここから乗船する人や見送りの人も多かった筈である。
当時の船旅は、昨今のクルーズのような手軽なものではなかった。
行くにしても来るにしても、それ相当の決断をして決めたものであろう。これが最後の見送りになるかもしれないと島内各地から見送りに来たのであろうし、渡航してきた人は出迎えだけを頼りにしていた人も多かったことであろう。
ターミナルの二階には大きなホールがあった。
我々は、クルーズの寄港地エクスカーションであるから何も持たず、パスポートも船に預けてあるので乗船証を見せるだけであった。
下船してちょっと、その辺りを歩いてみた。
今はどうか知らないが、当時は基隆駅前に、ケープを羽織った蒋介石の立像があった。