淡水区水源街一段三十一号にいまも畜魂碑が立っている。
場所はMRT「淡水」の駅から英専路を進んだ先である。
淡江大學のグランドの下で、淡水国小との間にある。
グーグルの地図には淡水鎮農會超市(農協のスーパーマーケット)と記入されている。
以前、ここには食肉解体処理場があったそうである。
台湾総督府民政長官 後藤新平は衛生管理の観点から私設の食肉解体処理を禁じ、そこに公設の食肉加工場を設けた。ここもその一つであった。
そして家畜の霊を慰める石碑が建てられた。
淡水の食肉加工場は戦後も継続されていたが、処理場は郊外に移転し跡地は農會(農協)に譲渡されスーパーマーケットが建てられた。
しかし敷地の隅のこの石碑は残された。
周囲には段ボールやビールケースが雑然と積まれて忘れられたような碑だったそうである。
しかし、日本時代の遺跡を調査している片倉佳史氏が台湾の読者から教えられてここを訪ねたとき、通りがかった店員から忘れ去られたわけでないことを知ったという。
いまでも月に二度、関係者が集まって慰霊の祈祷が行われているという。
淡水にも萬善堂がある。
台湾を愛した司馬遼太郎は「萬善堂を拝したかったのは台湾の心に接したかったからです」と台湾紀行取材を案内した老台北(蔡焜燦氏)に記したという。
この畜魂碑の例も、萬善堂と同じように台湾の人の優しさの表れであろう。
別のブログでプロ級の写真家 蔡坤煌醫師が淡水国小付近から大屯山を撮った写真を載せたときLCさんからここのことは教えて貰ったが未だに祈祷が行われているとは驚きであった。
畜魂碑は淡水のほかに、台北、北投、嘉義、台南などに残されているという。