父が何冊かのノートに随想を綴っていた。
その中から幾片かを小冊子にしたことがある。
知人に差し上げたりして、手許に一冊だけ残った。
1992(平成4)年、父が満80歳のときであった。
25項目が掲載されており、5行と短いものもあるが『台湾の話』だけは教え子が訪ねて来てくれたときのことを綴った「その1」、淡水で行われた淡水会のことを書いた「その2」、書道の仲間と最初に訪台したときの思い出である「その3」と3部になっている。
父は明治の生まれで、パーソナル・コンピュータやインターネットとは無縁であり、そのころやっとワードプロセッサが普及し始めた頃であった。
悪筆の私はワードプロセッサの恩恵に浴しているが、父はどこかで習ったわけでもないのに、書と水彩画を趣味のようにしていたので、必要のないものであった。
しかし、知人が人材派遣業とパーソナル・コンピュータやワードプロセッサの個人企業を始めたので小冊子にすることを勧めた。
手書きのノートから原稿用紙に書き写し、出来上がったものである。
表紙の色は、印刷製本の担当が標題を見て提案してくれたものである。