2010年12月05日
「将来有望な硬式飛行船」
2010年8月8日に(財)交通研究協会から発行された「飛行船の歴史と技術(交通ブックス308)」の著者、牧野光雄博士は日本大学名誉教授(航空宇宙工学科)で、ブイヤント航空懇談会の幹事の一人でもある。
牧野博士は同書の第10章「飛行船の有用性と将来性」のなかで飛行船の特性を述べ、航続距離、揚抗比、輸送力効率はジャンボジェットB747などよりずっと優れていることを指摘している。
また、以前から提案されてきた飛行機と飛行船のハイブリッドは本質的に無理があり、「アクロン」、「メーコン」やツェッペリンNT型のようなティルト推進方式の飛行船が良いという。
そして飛行船は大きければ大きいほど効率がよく、将来硬式飛行船が有望であると述べている。
面白いのは繋留方式で、ツェッペリン飛行船全盛時代に主にアメリカで用いられたスタブマスト繋留ではなく、イギリスで「R100」、「R101」に用いられたようなハイマスト方式を推奨している。
ニューヨークのエンパイア・ステート・ビルディングの頂部には飛行船を係留する装置が設けられていた。
突然訪れた飛行船の時代の終焉で実際に用いられることはなかったのであるが・・・
(牧野博士は補修や整備以外の通常時、地面近くに下ろさない方が良いとしている)
そして同章の終わりに硬式飛行船「麗峰」の試設計を紹介している。
その要目は
全長 :260メートル
最大直径: 44メートル
容量 :21万立方メートル(浮揚ガス199500立方メートル)
総浮力 :209.5トン
抵抗係数:0.021
船体自重:86.6トン
エンジン出力:3679PS
最大速度:135km/時
航続時間:160時間(時速125km)
乗員 :50名
乗客数 :180名
で、頂部にスカイラウンジを設けるとしている。
博士の設計では浮揚ガスにヘリウムを用いることを前提としているようであるが、昨今不活性ガスヘリウムの枯渇が心配されている。
したがって、ツェッペリン飛行船が「LZ129」(後の「ヒンデンブルク」)計画時に検討されたようなガス嚢を2重構造にして内嚢に水素を、外嚢にヘリウムを充填する方式を再検討することも意味のあることであろうと思う。
水素は無尽蔵の水から簡単に分解でき、浮力もヘリウムに勝る。
2010年には飛行船研究家のヴァイベル女史が著した「LZ129:ヒンデンブルク」という素晴らしい書籍が出版された。
鮮明な大判写真やイラストも掲載されている同書を購入直後に通読したが、とくに船体や付属設備の計画や実施、その経緯などに着目して今一度精読しているところである。
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