2010年12月03日
将来の航空機としての飛行船
飛行船は歴史上の航空機であると考えている人は多い。
しかし、私はさらに検討の余地があると思っている。
第一、現在のジェット旅客機は化石燃料を用いて力ずくで飛んでおり、膨大なエネルギーを消費して非常に効率が悪い。
おまけに大気を汚染し、騒音をまき散らすので居住地域や商工業地域では発着もできない。
都市間航空交通機関としてヘリコプターが提案されることがあるが、これは微妙なダイナミックバランスでかろうじて飛翔を実現したものである。
あの騒音と吹き下ろしでは、仮に災害救助に来てくれたとしてもヘリコプターに乗りたいと思う人は少ないと思う。
これらに較べて飛行船は非常にエネルギー効率が良く、吹き下ろしがないだけでなく大気汚染も少ない。
トラブルが生じても墜落の危険性は少なく、飛行機のような広大な飛行場も要らない。
それに旅客機に較べて広い居住空間がとれる。
飛行機が旅客運送を始めてからずっと旅客は座席に縛り付けられたままでエコノミークラス症候群を持ち出すまでもなく、同クラスでは2時間程度が限界である。
むろん、飛行船にも短所がある。
水素飛行船では爆発炎上の可能性があった。
それに速度や運動性に関しては飛行機に遠く及ばない。
船体が大きいので地上における取り扱いが厄介である。
空中にあっても悪天候に翻弄され、遭難することも多かった。
今回ははこの4項目が現在では決定的な短所ではないことを示すに留めて、今後ゆっくり検討してゆくことにする。
第一の爆発の危険性は浮揚ガスにヘリウムを用いることで一応回避された。
しかし、ヘリウムは簡単に作ることが出来ない不活性ガスなので、ツェッペリン飛行船の活躍した当時具体的に検討されていた2重ガス嚢などは真剣に検討する必要があろう。
速度や運動性が最も必要とされるのは軍用航空機である。
この点で飛行船は飛行機に及ばない。
けれども、航空旅行者に限って言えば東洋の果てからヨーロッパや南米に行くのに一週間程度は我慢出来るのではないだろうか?
最も、この点は最後に挙げる居住空間との兼ね合いとなる。
第3の地上に於ける移動や格納は確かに問題ではある。
しかし、ツェッペリン飛行船技術社の開発した「ツェッペリンNT型」は、運用に必要な地上要員数を1桁減らした実績があり、飛行船のハイマートシュタットであるフリードリッヒスハーフェンでは今日でも限られた要員で運航されている。
第4の悪天候対策は現在も重要な課題である。
しかし、今日では気象衛星や全世界にまたがる気象情報システムなど、DELAGの運航していた時代より気象予報システムは格段に進展しており、従来できなかった局地的異常気象も予知することができるようになっている。
これから、このテーマについても採りあげてみようと思っている。
イラストは1930年代に描かれた大型硬式飛行船の予想図で「ヒンデンブルク」のバーの数倍はあろうと思われるバーや広いダンスホールがエレベーターで昇る飛行船の上部に配置されている。
"将来の航空機としての飛行船"へのコメントはまだありません。