2010年08月03日
飛行船四方山話(200):「ヒンデンブルク」の浮揚ガス嚢
「ヒンデンブルク」は計画時からヘリウム船として設計されていた・・
[区分]設計:基本計画
[難易度]中級
[問題]
「LZ127:ヒンデンブルク」は当初からヘリウム船として計画されました。
しかしヘリウムは水素に較べて揚力も少なく、非常に貴重な不活性ガスでコストも高いので維持や補給に工夫が凝らされていました。
その設計上のアイデアを次のうちから選んで下さい。
1.外気圧との差で浮揚ガスを排出する調整弁を自動から手動に切り替えた
2.ガス嚢を漏れの少ない膜に変更した。
3.浮揚ガスにヘリウムと水素を併用、中央部分にヘリウムを両端部に水素を充填した
4 ガス嚢を二重にして、外嚢にヘリウムを、内嚢に水素を充填することにした
[答]
4
[解説]
「LZ127:グラーフ・ツェッペリン」の次に設計されたのは、さらに大きい「LZ128」でした。
しかし、1930年10月にイギリスのカーディントンからカラチに向かった「R101」がフランスで墜落炎上したため、水素船であった「LZ128」を棚上げし、ヘリウム船「LZ129」が設計されました。
当時、ヘリウムのコストは水素の40倍とも60倍とも言われるほど高価でした。
それで浮揚ガス嚢を2重にして、内嚢に水素を充填し、それを外嚢のヘリウムで遮蔽する構造が採用されました。
エンジンもガソリンより引火しにくいディーゼルエンジンに変更し、その排気から水を回収してバラストにすることも試みています。
しかし、ヘリウムガスはアメリカでしか生産されないので建造中から輸出するよう交渉していましたが、結局輸出は認められませんでした。
1937年5月に「ヒンデンブルク」がレークハーストで爆発炎上したあと、アメリカの議会はヘリウムをドイツに輸出する特例法を可決しましたが、内務長官イッキースが輸出を承認せず、ヘリウム船に設計変更された「LZ130:グラーフ・ツェッペリンⅡ」も水素船として完成しています。
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