2010年06月23日
飛行船四方山話(169):大西洋を跨ぐ振り子飛行
ルフトハンザとは他にも業務を提携していた・・
[区分] 航行・郵便支援
[難易度]初級
[問題]
DELAGの飛行船「グラーフ・ツェッペリン」はルフトハンザと航空郵便業務で提携していましたが、大西洋に面した2地点間で「振り子飛行」と呼ぶ郵嚢交換飛行を実施したことがあります。
それは次のうちのどれでしょうか?
1.ダカール・バイア間
2.バサースト・レシフェ間
3.ダカール・ナタール間
4.バサースト・リオ間
[答]
2
[解説]
南米にはドイツ人移民が多く、ルフトハンザは早くからヨーロッパと南米の定期郵便貨物路線の開設の試行を計画していました。
1933年に貨物船にカタパルトを設置して、南大西洋に浮かべアフリカと南米大陸の間を飛行艇ヴァル(ドルニエ製)で結ぶ試験飛行を行いました。
ヨーロッパから英領ガンビアのバサースト(現:バンジュル)に送られてきた郵嚢を飛行艇ヴァルに載せて、南大西洋に停泊している「ヴェストファレン」あるいは「シュヴァーベンラント」の傍に着水させ、クレーンで船上に引き上げて燃料を補給しカタパルトで射出してブラジルまで届けたのです。船舶は定期入渠といって一定期間ごとに造船所のドックに入って定期検査を受ける必要があります。
1935〜6年に、その郵便支援業務を「グラーフ・ツェッペリン」が引き受けたのです。ブラジル、ペルナンブコ州のレシフェには燃料補給施設も繋留柱もありますが、バサーストには何の設備もなかったので、携行した郵嚢を低空から投下し、地上からはカラビナ付きのロープで引き上げてレシフェに持ち帰りました。
この飛行はアフリカ側で着陸することなく引き返したので「振り子飛行」と呼ばれていました。
現在、バサーストを探すとカナダ、オーストラリアなどの小さな街しか出てこないようです。
ちなみにダカールはバサーストの少し北のダカール・ラリーで有名な街で、バイアはブラジルバイア州の主都サルバドルの別名です。ナタールはブラジル、リオ・グランデ・ド・ノルテ州の主都で、レシフェの北にあたります。
上掲の海図は1936年3〜4月に実施された「LZ129:ヒンデンブルク」の第1回南米飛行の航路図で、ペルナンブコのレシフェには寄らずに直接リオ・デ・ジャネイロに行っていることと、往路でベルギーから英仏海峡に入り、ビスケー湾を跨いで南下していることが判ります。
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