2010年06月10日

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飛行船四方山話(156):第1船長、第2船長、第3船長

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実に変な呼称である・・・

[区分]運航・乗組員

[難易度]中級

[問題]
NTT出版から刊行されたA氏の本には、E.レーマンをファースト・キャプテン、H.C.フレミングをセカンド・キャプテン、H.フォン・シラーをサード・キャプテン兼機関長と書かれており、丸善から出版されたS氏の本では、それぞれ第1船長、第2船長、第3船長兼運転技師としています。また、中央公論社から出版されたT氏の本ではレーマンを1等航空士としています。
飛行船には船長が3人も必要だったのでしょうか?
次の回答群から正しいものを選んで下さい。

1.実際に第1船長、第2船長、第3船長の配置があった
2.船長資格の当直士官は乗船中24時間職務に従事するため3直配置であった
3.飛行船は区画毎に船長と呼ぶ配置(職務)があった
4.ダイニングテーブルが複数あるのでそれぞれキャプテンとして陪食した

[答]

[解説]
キャプテン(船長)という肩書きは、個人の免状資格と、その航海の運航責任者という意味で使い分けなければ混乱が生じます。
軍人の場合は階級にキャプテンがあり、海軍では大佐ですが、陸軍では大尉に相当します。海軍の場合、戦艦・巡洋艦の艦長に該当するのですが、陸軍のキャプテンはベースボール、フットボールの主将クラスのリーダーに当たります。
洋上船舶の場合、船長の海技免状を持つ人が1等航海士として乗船することはよくあることで、大型客船ではキャプテンのほかに、上級船長格のコモドア、副船長であるデュプティキャプテン、ヴァイスキャプテンなどの乗船することもあります。
船舶の場合、船長がブリッジで操船の指揮を執らなければならないのは入出港時や狭隘な水路に限定され、通常の運航は、3直(24時間を3人で交替して執務)の航海士に任せています。
旧国鉄の宇高連絡船は、宇野・高松両港の間は沢山の船舶が航行する備讃瀬戸で、船長はブリッジを離れられないので3人の船長が交代で指揮を執っていました。
飛行船の場合、ちょっとした重心移動や気象変動にも対処する必要があるため、ブリッジでは当直の航海士、昇降舵手、方向舵手のほかに当直船長とも言うべき当直士官が3直で配置されていました。
飛行船全体の運航責任者は船長資格の指令(軍用飛行船では司令)です。
1直の当直士官は乗客対応など実務担当士官としての業務もあり、2直の当直士官はパーサー(主計長)、3直は航海長の職務を担当していました。
世界周航で1直の当直士官であったハンス・フォン・シラー船長が乗客を確認し乗船券にサインしたり、フリードリッヒスハーフェンを離陸後に「次の着陸地点は東京です」とアナウンスしたり、船上では貴重な水の節水を呼びかけるなど乗客対応に当たっています。
第1船長、第2船長、第3船長という変な日本語は、世界周航に乗船取材したE記者が飛行船には船長が沢山居ることを訝って質問して説明を受け、船上で作った造語です。
レーマン船長を第1船長、フレミング船長を第2船長、フォン・シラー船長を第3船長としたのは席次を考慮したもののようです。
A氏、S氏はそれを鵜呑みにしているものと思われます。

写真は「LZ126:ZRⅢ(ロサンゼルス)」をアメリカに回航するするときに撮影されたもので、左からアルバート・ザムト、レオ・フロイント、マックス・プルス、ハンス・フォン・シラー、フーゴー・エッケナー博士、アントン・ヴィッテマン、H.C.フレミング、ワルター・シェルツ、ハンス・ラデヴィック、ウィリー・シュペック、ルートヴィヒ・マルクスです。


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