2010年01月14日
1929年7月16日
1929年7月16日、北ドイツロイドのスーパーライナイー「ブレーメン」はブレーマーハーフェンを出航した。
サザンプトン、シェルブールに寄港してニューヨークへ向かう処女航海である。
レオポルト・ツィーゲンバウム船長がコモドアとして座乗していた。
このコモドアという称号に相当する適切な日本語はない。
強いて訳せば上級船長ということになる。
日本の船舶にはない配置である。
日本船では例外的に、クルーズ船「飛鳥」とその後継船「飛鳥Ⅱ」にはキャプテンとスタッフキャプテンが乗っていた。
クルーズ船の場合、港内や瀬戸内海のような狭隘な海域を航行中でも、ディナーやパーティに出席したり、ダンスタイムには婦人客のお相手をせねばならぬこともあり、その間本船の運航はスタッフキャプテンに委ねているのである。
船長という称号は個人に与えられた資格と、運航する船舶の総責任者という配置を指す場合があるので混乱を生じることがある。
私は1971年に大型専用船に乗って途中無寄港でアフリカの大西洋岸まで往復したことがあるが、そのときは船長資格をもつY氏が一等航海士で、一等機関士資格のS氏が二等機関士、局長の資格を持つT氏が次席通信士を務めていた。
最近のクルーズ船には船長のほかに、Vice Captain と Deputy Captain が乗っていることがある。
しかし欧米の大手海運会社の大型船には Commodore が指揮しているものがある。
これはその海運会社を代表する、Captain より格上の称号であり、海軍でいえば大佐の艦長を配下に指揮する戦隊司令や艦隊司令官の将官にあたる。
キュナード社の客船「クィーン・エリザベス2」の船長であったロナルド・ワーウィックもキャプテンからコモドアに昇格している。
「ブレーメン」はこの航海で大西洋を4日17時間42分で走破して、20年以上キュナードの「モーレタニア」が保持していたブルーリボンを奪還した。
それだけではない。
同船はニューヨーク初入港のおよそ20時間前にカタパルトから郵便機ハインケルHe12を射出し本船入港前にハドソン川に着水し、郵便物を届けることに成功している。
そして翌月1日にDELAGの大型飛行船「グラーフ・ツェッペリン」が、世界周航の発着点に指定されたレークハーストに向かった。
"1929年7月16日"へのコメントはまだありません。