2010年01月03日

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ブルーリボン(2)

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前回、ブルーリボンは公式な賞ではなく、学会や協会から認定されたり授与されたりするものではないと述べた。

しかし、1890年前後から北大西洋をわたる旅客や舶載貨物の争奪競争は熾烈をきわめたので、海事ジャーナリストのあいだで、不文律が出来ていた。

ブルーリボンの栄誉を勝ち得る条件の一つは、当然ながらそのときブルーリボンを保持している船舶より速い速度で大西洋を横断することであり、二つ目の条件として記録を樹立する横断は西航、すなわちヨーロッパからアメリカへ渡らなければならなかった。

アメリカ側の終点はニューヨーク港としても、ヨーロッパ側は広範囲に大きな港湾が散在しており、地中海からジブラルタル海峡を抜けるものもあれば、リバプール、サウザンプトン、シェルブールなど広範囲にわたる。
しかも、目的港に着いても岸壁が空くのを待って沖泊まりする場合もある。

それで、海図上に幾つかのポイントを設定し、その間の大圏コース上の距離を大西洋両側のポイントを通過した時間から平均速度をとってこれを比較することにしたのである。

西側のポイントとしてはニューヨーク港外のアンブローズ燈台船やサンディ・フック、東ではビショップ岩礁、ドンツ岩礁などがある。

ブルーリボンを狙う航海では、寄港地を出港して最寄りのポイントまで徐々に増速し、そのポイントからニューヨークのポイントまでボイラーも熔けよと燃焼を続け、ポイントを通過したあとはタグボートの曳航に身を任せて接岸するのである。

乗客や貨物を搭載して定期運航していることもブルーリボン獲得の条件であった。
速度記録を狙って一度限りの航海で速度記録を樹ててもブルーリボンを勝ち得たとは認められなかった。

挿絵はブルーリボンホルダーの一隻「カイザー・ヴィルヘルムⅡ」である。

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