2009年09月27日

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近代的旅客用飛行船の系譜(4) 休戦協定直後に出現した新型飛行船(2)

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「LZ120:ボーデンゼー(Bodensee)」は3隻の試作飛行船、105隻の軍用飛行船の建造後、旅客輸送のために計画され、新造された最初の飛行船であった。

第一次大戦前、数隻の飛行船が建造され、DELAG(DEUTSCHEN LUFTSCHIFFAHRT-AKTIENGESELLSCHAFT)によって遊覧飛行などに運航されていたが、「LZ10:Schwaben」は陸軍飛行船「LZ9:Ersatz ZⅡ」、同「LZ12:ZⅢ」と同型で、基本的に姉妹船であり「LZ6」は軍用に採用されることを期待したが飛行船を持て余し気味の陸軍に採用されなかったのでDELAGが運航したものであり、本格的旅客用飛行船とは言えなかった(DELAGの設立はツェッペリン飛行船の開発を持続させ、発展の基礎となった歴史上重要なことであるが、これについては別項に譲る)。

また「LZ120」は初飛行の4日後から3ヶ月にわたり、ほぼ毎日運航スケジュールにしたがって路線運航に従事し、戦後の混乱したドイツ国内交通に大きく寄与した。
偶数日にスイスとの連絡船の接点でもある南独のフリードリッヒスハーフェンからベルリン(シュターケン)に向かい、奇数日にフリードリッヒスハーフェンに戻っているが、そのうち十数回はミュンヘンに途中寄港しており、北欧、ストックホルムへも往復している。

同船は、ツェッペリン飛行船製造社で建造された飛行船として、はじめて最適な流線型として建造された。そしてその速度は時速130キロに達し、世界最速の飛行船であった。
また、初めて主船体の下に操縦兼乗客用区画が一体として取り付けられた硬式飛行船であった。

そのほかにもこの飛行船を本格的旅客用飛行船とする理由は多い。例えば、アクティブな無線方向探知機と無線電話交信の運用試験を行った。船(機)上新聞を作成し発行した初めての航空機でもあった。電報を積荷として運送した唯一の飛行船でもあった。

同船は1919年8月に初飛行した直後から定期運航に従事し11月30日まで運航されたが、同年12月1日に連合国管理委員会の命令により突然中止させられてしまった。

その後、戦時賠償としてエッケナー博士が指揮してイタリアのチャンピーノまで移送され、「エスペリア(Esperia)」と改名されて数多くの飛行を達成し、1925年に解体されている。

「LZ120:ボーデンゼー」は竣工時の全長が120.8メートルと、ツェッペリン飛行船製造社で建造されたものの中で最も短い飛行船であった。
最大直径は18.7メートルと、当時の飛行船としては以上に太かった。
飛行船の主船体に両端をまるめた円筒形ではなく流線型が採用されていた。
ガスセルの数は、新造時12で、ガス容量は2万立方メートルであった。
これは1913年に建造された「LZ17:ザクセン(Sachsen)」の19500立方メートルとほぼ同量であったが、「ザクセン」の船体長さは140メートル、平行部直径は14.9メートルであったので、奇妙に見えるくらい太い印象を与えたはずである。
主構造の材質はジュラルミンで縦通材の本数は17本、すなわち横断面は正17角形であった。
乗客用ゴンドラは、操縦用ゴンドラと一体で作られ、主船体の前下方に組み付けられていた。
エンジンゴンドラは3基取り付けられていた。
中央の左右に2基と後部中心線上に1基である。
エンジンはマイバッハⅥa型6気筒直列エンジンであったが、左右のゴンドラには各1基、後部ゴンドラには2基のエンジンが約2対1の減速ギアで連結されていた。
従って左右のプロペラは2ブレード、直径3.2メートルの推進型であり、船尾ゴンドラ後端に取り付けられたプロペラは直径5.2メートルであった。

試験飛行は1919年8月20日と、21日に2度にわたって行われており、第1回試験飛行では最小回転半径測定を含む旋回性能のほか、空気抵抗を算定するために通常運転時にエンジンを停止し、静止までの時間と距離も測定されている。

2回目の試験飛行では傾斜試験やエンジン連続運転などの他に推進性能が測定された。
4基のエンジンで巡航速度(エンジン回転数毎分1360回転)で時速119キロメートル、全エンジン全速(毎分1460回転)では時速130キロメートル、3基のエンジン全速で毎時112キロメートル、左右2基のエンジン全速で毎時94キロメートル、船尾エンジンのみ全速では毎時72キロメートルと記録されている。

「LZ120:ボーデンゼー」は硬式飛行船の速度記録を塗り替えたのである。


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