2009年04月06日
飛行船四方山話(149): ヘリウム充填硬式飛行船の寿命
水素が飛行船事故の元凶のようにいわれることがあるが・・。
[区分] 一般・方式
[難易度]中級
[問題]
アメリカの飛行船には爆発の危険性のない不活性ガスヘリウムが用いられましたが、ヘリウム充填硬式飛行船の平均寿命はどのくらいだったのでしょうか?
参考までに水素飛行船の「グラーフ・ツェッペリン」は8年9ヶ月間飛行を続けて解体されています。
1. 3年余
2. 6年余
3. 9年余
4.12年余
[答] 1
[解説]
NACA(国家航空諮問委員会:のちにNASAとなる)は1921年9月にアメリカが実質的にヘリウム源泉を独占していることを指摘して大統領および陸海軍大臣にアメリカが飛行船開発プログラムを継続するように勧告しています。
その翌年自由気球にヘリウムを充填しミルウォーキーでデモ飛行が行われています。
1923年にはフランスに不時着した「L49」を参考にフィラデルフィア航空廠で作られレークハーストで組み立てられた「ZR1:シェナンドア」がヘリウム飛行船として進空しています。
その前年にドイツのツェッペリン社に戦時賠償の一部として硬式飛行船「ZRⅢ」を発注しました。
同船はレークハーストに移送された後、ヘリウムに換装され「ロサンゼルス」と命名されています。
同年10月にはアメリカのグッドイヤー・タイヤ・ゴム社がツェッペリン硬式飛行船の製造権を獲得しました。
グッドイヤー・ツェッペリン社で「ZRS4:アクロン」と「ZRS5:メーコン」の姉妹船がヘリウム船として建造されました。
「ZR2」と命名されるべくイギリスの飛行船廠に発注された「R38」は試験飛行で墜落し、乗船していた米海軍艤装員の多くが犠牲になっています。
「ZR1:シェナンドア」は1923年11月4日に初飛行し、1925年9月3日に乱気流のため空中で3つに分解して墜落し、乗員43名中14名が死亡しています。
「ZRⅢ:ロサンゼルス」は1924年8月27日に初飛行し、1932年6月30日の最終飛行まで331回、4181時間余り飛行し、1939年に解体されました。
「ZRS4:アクロン」は1931年9月25日に初飛行し、1695時間飛行したあと、1933年4月4日に海上に墜落しました。
このとき、誰も救命胴衣を付けておらず、76名の乗組員のうち73名が死亡しています。
「ZRS5:メーコン」はその直後の1933年4月21日に初飛行し、1935年2月12日に洋上で破壊しましたがこのときの犠牲者は2名でした。
結局、ヘリウム飛行船の寿命は
「シェナンドア」1年10ヶ月
「ロサンゼルス」7年10ヶ月
「アクロン」 1年 6ヶ月
「メーコン」 1年 9ヶ月
と平均しても3年3ヶ月、「ロサンゼルス」以外では2年に達するものはありませんでした。
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