2009年04月04日
飛行船四方山話(147): 謎のツェッペリン飛行船
第一次大戦後、何とかして飛行船の運航を再開したかった・・。
[区分] 一般・歴史
[難易度]上級
[問題]
第一次大戦に敗れたドイツでは、既存あるいは建造中の飛行船でなるべく早く大西洋横断航路を再開しようと懸命の努力が重ねられていました。そんな挿話のなかに良く出てくる謎の飛行船とは次のうちのどれでしょうか?
1. LZ70
2. L77
3. L90
4. L100
[答] 4
[解説]
グッドイヤー・ツェッペリンから1934年にフリードリッヒスハーフェンの工場に派遣されて一年以上同地に滞在し1938年にも再訪したハロルド・ディックは、ツェッペリン飛行船製造で撮影した写真や、持ち帰った飛行船の設計あるいは運用に関わるマニュアルを引用して「グラーフ・ツェッペリンとヒンデンブルク、大型旅客用飛行船の黄金時代」という著書を出しています。
彼はエッケナー博士や、その子息クヌートと親交があり、同書には彼ならではの記述もふんだんに載っています。
そのなかに
『新造船(LZ127)の大きさの上限は1918年の「L100」と同じく1916年に完成したフリードリッヒスハーフェンの建造用格納庫の寸法で決まった』、
『第一次大戦終了時には「グラーフ・ツェッペリン」よりやや大きい3813,500立方フィートで、マイバッハ製高々度用エンジンを10基装備し、計画有効載荷重量92トンの「L100」も建造されていた』、
『数種類の設計が行われ、同社は戦時中の「L100」を「LZ125」に再生させようと真剣に検討した』、
などの記述があります。
しかし、彼の渡欧時期からして当地で聞いた伝聞だと思われます。
ディックとは逆にフリードリッヒスハーフェンからグッドイヤー・ツェッペリンに飛行船設計の責任者として派遣され、「ZRS4:アクロン」、「ZRS5:メイコン」の設計を担当したカール・アルンシュタインの伝記に付録の一覧表には、いずれも第一次大戦の終戦で建造中止となった「LZ115」と「LZ119」をいずれも「L100」と註記されています。
「LZ115」の項ではガス容量2,650,000立方フィート、長さ743フィート、最大直径82.5フィート、エンジン6基(合計出力1470馬力)とあり、
「LZ119」の項ではガス容量3,810,000立方フィート、長さ781フィート、最大直径96.5フィート、エンジン10基(合計出力2450馬力)とされています。
どうも戦後並行して設計された、高速郵便兼貨物船、高速郵便兼旅客船(LZ124、LZ125)とは別の飛行船のような気がしています。
ちなみに回答群の「LZ70」は「LZ114」までのうち唯一の欠番であり、海軍飛行船を示す「L-ナンバー」は「L72(LZ114)」までしか符番されていません。
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