2009年02月09日

*** 当ブログは2014年5月末に引っ越しました…新しい「紺碧の海」はこちらです ***

飛行船四方山話(96): ドイツ以外の硬式飛行船(11)

R100_1.jpg

イギリスの硬式飛行船(10)

[区分] 一般・歴史
[難易度]中級

[問題]
1929年末に初飛行したイギリスの飛行船R100は、ゴンドラをエンジンゴンドラのみにして居住区を主船体内に設けていました。
メスルームやキャビンを含むアコモデーションスペースは何層だったでしょうか?

 1. 1層
 2. 2層
 3. 3層
 4. 4層

[答] 3

[解説]
1921年7月に開催されたイギリス帝国会議で、他の案件とともにイギリス本土=カイロ=インド=シンガポール=オーストラリア=ニュージーランドをつなぐ飛行船運航が討議されました。
その後、この案は修正を加えながら具体化されて行きました。

差し当たって、2隻が建造されることになり、R100はヴィッカース社が支援して設立したエアシップ・ギャランティ社のヨークシャー州ハウデンで、R101はカーディントンの官営飛行船工場で建造されることになりました。

R100は1924年10月に設計が開始されましたが、主任設計はR80を設計したヴィッカースのバーネス・ウォリスが担当しています。
船体断面はR101が30角形だったのに対して16角形なので随分角張った外観を呈していました。

ロールス・ロイスの12気筒V型コンドルⅢB型670馬力エンジンを内蔵した6基のエンジンゴンドラ以外はすべて主船体内部に納められていました。
同船の最高速度は飛行船として最も速く、時速130kmを達成しています。

アコモデーションは3層から構成されていました。
最下層には乗務員用の食堂や食料貯蔵庫などがあり、その上の中心線寄りに厨房やパントリー、その外側に通路を隔てて下部乗客用キャビンがあり、その舷側部は大きな展望窓に面した幅2.7m、長さ12mと広大な吹き抜けのプロムナードになっていました。
このデッキの中央は2層吹き抜けの50人の食事が出来るダイニングサロンで、大西洋横断客船のダイニングのような踊り場のついた階段が設けられていました。
階段を上がると、ダイニングを見下ろす通路の外側に上部乗客用キャビンがあり、外部のバルコニーはプロムナードの上から下界を展望することが出来るようになっていました。開放型ベランダもラウンジもキャビンも換気装置がありました。
当時の航洋客船に劣らないサービスを具現しようとしたものでした。

乗客定員は100名、乗組員は37名で、その中にはウェイトレスも数人乗り組んでいました(ダイニングサロンに制服のウェイトレスが6名写っている写真があります)。

R100は1930年7月29日に乗客を乗せてカーディントンを出発し、カナダのモントリオールに行き、カナダ各地を飛行して8月16日にイギリスに帰着しています。
往航の所要時間は78時間51分、復航は偏西風に助けられて56時間30分でした。

この成功作R100も、R101の事故の後運航は中止され、1931年11月に解体されました。

Comment on "飛行船四方山話(96): ドイツ以外の硬式飛行船(11)"

"飛行船四方山話(96): ドイツ以外の硬式飛行船(11)"へのコメントはまだありません。