2009年02月07日
飛行船四方山話(94): ドイツ以外の硬式飛行船(9)
イギリスの硬式飛行船(8)
[区分] 一般・歴史
[難易度]中級
[問題]
イギリスの飛行船メーカーの一つであるショート・ブラザーズ社はアメリカ海軍から硬式飛行船を受注しました。
その飛行船はどうなったのでしょうか?
1. ショート・ブラザーズ社でR38として完成し、アメリカ海軍に引き渡されて
ZRⅡとなった。
2. カーディントンのショートの工場は官営飛行船工場となり、建造中の飛行船は
キャンセルされ解体された。
3. 官営飛行船工場で完成し、試験飛行完了後 解体されアメリカに舶載出荷され
アメリカで再建されて引き渡された。
4. 官営飛行船工場に移管されたのちR38として完成し、試験飛行中に墜落して
乗船していた米海軍乗組員も犠牲になった。
[答] 4
[解説]
アメリカ海軍は大西洋、太平洋の哨戒に硬式飛行船を用いることを考えました。
そのため、フランスで捕獲されたドイツ海軍飛行船「L49」の情報を参考に、1919年にフィラデルフィアの海軍航空廠で「ZR-1」の製作を始め、1922年4月にレークハーストで組立を始めました。
これと並行して、ドイツの模倣にしても硬式飛行船建造実績のあるイギリスにも1隻発注して、これを「ZR-2」とすることにしました。
アメリカ海軍向けの「R38」はカーディントンのショート・ブラザーズの飛行船工場で建造されることになりましたが、間もなくその工場は官営の飛行船工場になりアメリカとの契約も飛行船の建造工事も継承されました。
「R38」と同時に同型船「R39」、「R40」、「R41」も1918年に発注されました。
「R39」と「R40」はアームストロング社のバーローで同年起工されましたが、終戦に伴って「R41」とともにキャンセルされています。
基本設計は英海軍飛行船設計部のCIRキャンベルが行いましたが、詳細設計は以前からカーディントンで仕事をしていたショート・ブラザーズの設計陣が担当しています。
同船の設計はドイツのプロトタイプを参考にしていますが、船体長さも延長し、直径もドイツの飛行船より拡大されていました。
原動機はサンビーム・コサック350馬力を6基装備していました。
「R38」は1921年6月23日に初飛行しています。
そして、8月24日の第4回試験飛行でハンバー川に墜落し、アメリカ海軍乗組員49名中44名が同乗しており、そのうち15名が犠牲となりました。
この事故で、イギリス政府は飛行船の軍事使用を取りやめると発表しています。
こんなときに、第一次大戦の賠償交渉が行われており、80万ドルの賠償金の代わりに新造飛行船を現地渡しで提供するというエッケナー博士の提案を受け入れて建造されたのが「LZ126:ZRⅢ(ロサンゼルス)」です。
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