2008年11月20日
飛行船四方山話(15):フレーム材質
今回は構造材料から・・・。
[区分] 基本設計・構造材料
[級] 初級
硬式飛行船には、一番外に外被があり、そのなかに形状を保持するためのフレームがあります。
そのフレームの材質として使われなかったものは次のうちのどれでしょうか。
1.木材
2.軽金属(アルミニューム、ジュラルミン)
3.鋼材
4.竹
[答] 4
[解説]
最初に硬式飛行船を開発したツェッペリン伯爵はフレームの素材として、当時生産が開始されたばかりのアルミニュームを使用しました。
1825年にデンマークのオーステッドによって取り出され、1855年にフランスで小さなインゴットが作られ、1889年にエッフェル塔が造られ初めてガソリン自動車が出品されたパリ万博に展示されました。
これを見てリューデンシャイデにアルミニューム工場を作って生産を開始したカール・ベルクは、その販路拡大のために、ツェッペリンにアルミニューム材を無償で提供したと言われています。
純アルミニュームは軽いのですが軟らかく、構造部材には適用出来なかったので、この当時、純アルミニュームに近いアルミニューム合金(アルミニューム・マンガン・マグネシウム、アルミニューム・亜鉛?)が使われました。
設計主任のデューア博士は、軽量で構造強度を持たせようとアルミニュームの型材を組み合わせた三角梁を考案して採用しました。
アルミニュームと銅との合金は、熱処理を施した場合 鋼に匹敵する強度を示すのですが、この合金は偶然に発明されたものと言われています。
この特許を購入したデュレン金属工業社がデュレンとアルミニュームからデュラルミン( Duralmin )と命名したものです。
ツェッペリン飛行船で最初にデュラルミンが採用されたのは1914年に建造されたLZ26(海軍飛行船ZⅩⅡ)です。
シュッテ・ランツの飛行船はフレームに木材(積層材)を用いていました。
ツェッペリンの特許を回避するためで、ランツは農業機械に合板の使用実績がありました。
しかし、第一次大戦になり、互いの特許を許諾しあうことになり、シュッテ・ランツも後期の飛行船のフレームには軽合金を用いています。
後にイギリスでも硬式飛行船を建造しましたが、その時にフレームの一部に鋼材が使われています。
イギリスが第二次世界大戦中も、ランカスター、モスキートなどに広範に合板を用いていたことはよく知られている通りです。
戦前の飛行船に竹が用いられたという話は知りません。
戦後は準硬式飛行船ツェッペリンNTのようにカーボンファイバーなどが用いられているようです。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
写真はフリードリッヒスハーフェンのツェッペリン博物館で2007年春に撮影したもの
"飛行船四方山話(15):フレーム材質"へのコメントはまだありません。