2008年09月29日
文献調査の楽しみ
最近、飛行船の原著を読むのが楽しみである。
クラインハインス、イタリアンダー、ロビンソンのような硬式飛行船研究家の著書も読んでいるが、エッケナー博士、ザムト船長、フォン・シラー船長など実際に命がけで飛行船に取り組んでいた人達の書籍は格別である。
「LZ-127:グラーフ・ツェッペリン」が最初の渡米で水平尾翼下面の外被を損傷して米海軍に救助を要請したり、2度目の渡米を目指しながら、スペイン沖で立て続けに起きたエンジンの故障で墜落寸前でフランスに不時着したときの話は経験したものでなければ残し得ない貴重な記録である。
エッケナー博士は主要な飛行で指揮を取っていたし、気象・海象やそのときの操船などを詳しく述べていて、彼の著書は第一級の史料ではあるが何しろ国家元首も霞むほどの大物であったので、個人的なことや国際間の問題については敢えて書き残していない事柄も多いのは事実である。
それに較べてザムト船長などの本では、ルートヴィヒ・デューアやアルフレート・コルスマンなどツェッペリン関係者だけでなく、最大の競争相手であったシュッテ・ランツ飛行船のシュッテ博士やカール・マイバッハなどの逸話や、最初のオリエント飛行でイギリスが植民地であったエジプト上空飛行を認めなかったのは「R101」を最初に訪問する飛行船にしたいという思惑からだったなど、何にもとらわれずに書いているのも面白い。
特に、これらに関わった人達の立場や思惑だけでなく、ものの考え方や人格が書面に読み取れることは大きな楽しみである。
見出しの写真は大西洋のまっただ中で暴風にあって水平尾翼の下面が破れ、ザムトやクヌート・エッケナーが危険を冒して緊急対策を講じているところである(ザムトの著書から)。
辞書を引きながら原書を読むことは、最近の大きな楽しみになっている。
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