2007年08月18日
(飛行船:421) エッケナー博士とツェッペリン飛行船(72)
(グラーフ・ツェッペリンから見たエルパソ:ツェッペリン・アルバム(タバコカード集)から)
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世界周航(25)
そのとき私はそう考えていた。
だから、何かするときにはそれなりの理由が必要であった。
確かに ここの気象、特に強大な竜巻は想像も出来ないほど酷く厳しいこともあるが、これらの嵐の広がりはかなり限定されており、比較的容易に回避することが出来た。
広範囲な雷雨前線はヨーロッパの前線のような激しい環境条件の変動を伴うものではない。
また 上下方向の突風はそれほど外乱を伴うものでないという印象を受けた。
これは一般的に大陸の、相対的に乾燥した気団がその地域を覆い、ヨーロッパ西岸がガルフストリームの非常に湿った空気を受けるのに対し、ロッキー山脈を越えてくる太平洋からの幅広い気流を遮るからであると考えられる。
このあとまもなく大陸的現象を経験することになる。
太平洋を航行中に経験した安定した大気に対して、米大陸は非常に面白くなかった。
ロッキー山脈南端をまわるために 夜間サンディエゴに向かって南下していて、アリゾナ州ユマに向かって低高度で操舵した。
そこからアリゾナ州とニューメキシコ州を越えてエルパソに向かっていたときのことである。
夕刻、アリゾナ州境にいた。
素晴らしく晴れ上がった日であった。
南には遠くカリフォルニア湾とメキシコが見えた。
そこでは雷嵐が発達しているように見えた。
アリゾナの砂漠に向かっている飛行船の前方は非常に晴れ上がり、早朝の冷気がとても穏やかで、この静かな大気の中を航行するのはとても良い気分であった。
非常に遠くまで展望がきいた。
特に北には雄大なコロラド川が山岳の渓谷に注いでいた。
それに沿ってグランドキャニオンまで引き返したがったが、残念なことに この美しい景観は見えなくなった。
ゆっくり昇った太陽が照り始め、地上の大気を暖めた。
太陽が昇るにつれて飛行船は揺られ始めた。
最初はかろうじて気がつく程度であったが、昼頃にはとても激しくなり、昼食のテーブルでは食器類が跳び上がりはじめ、荒天の海を行く汽船の食卓のように食器留枠を上げねばならなくなった。
飛行船は上昇気団により、一気に200〜300m持ち上げられ、同じだけ引き落とされた。
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