2007年08月15日

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(飛行船:418) エッケナー博士とツェッペリン飛行船(69)

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(ハースト氏とエッケナー博士の記念絵皿)

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 世界周航(22)

この街の上空を15分ほど巡っただけで飛行を続けた。

着陸地点はロサンゼルスであり、そこからほぼ720km南にあった。

太平洋横断記録を残すためだけにサンフランシスコに向かったのである。

もし、ロサンゼルスに直行していたら1時間だけ余計にかかり、午後7時に着陸することが出来た筈であった。

そして今、そこに向かうために数時間かけることになった。

エンジンを絞って、ゆっくり飛行するその沿岸の景観は魅力的であったが、2時間もすると闇に紛れてしまった。

午後11時に、この飛行の後援者であるウィリアム・ランドルフ・ハースト氏の豪邸のある場所に近付いていた。

見渡したが、驚いたことにすべては暗闇に包まれていた。

誰も起きているとは思わなかった。

しかし突然、数百の照明が点灯され、大きな屋敷と邸内の沢山の小さな小屋が輝く光に浮き上がった。

それは特別な、忘れられない驚きであった。

ハースト氏に無線で感謝のメッセージを届けた。

午前1時過ぎ、ロサンゼルス上空に到着したが、海軍当局と午前5時以前には着陸しないと申し合わせていた。

それで3〜4時間、上空で旋回しながら時を待ち、乗客と乗員を休ませていた。

5時の着陸は次の理由で非常に拙い結果となった。

地上の空気層は夜のあいだに、地表からの冷気と山岳から吹き下ろす冷気で冷え切っていた。
これは何れも当地では判りきった現象であった。

高度500mで飛来した飛行船のガス温は25℃であるのに、地表の気温は19℃しかなかった。

この大きさの飛行船では、気温が1℃下がると浮力は約300kg増加する。

従って、飛行船はこの地表の冷たい空気層に降りると1800kg軽くなった。

低く飛びながらガス温を地表層の気温まで下げようと試みたが、それには非常に長時間かかるのでガス温を気温と同じになるまで下げるには数時間が必要であった。

それで、グランドクルーが飛行船を地表に引き下ろすことが出来るように更に1000立方mのガスを操作弁から排出する決心をしなければならなかった。

この事によって、その日の夕刻再び離陸することが非常に難しくなった。

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[註] 記念絵皿
見出しの写真は世界一周飛行を達成したフーゴー・エッケナー博士と、その費用の大半を出資したウィリアム・ランドルフ・ハースト氏の肖像を入れた記念絵皿である(出典:Brigitte Kazenwadel-Drews著 "Zeppelin erobern die Welt")。


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