2007年07月17日
(飛行船:390) エッケナー博士とツェッペリン飛行船(45)
(ブレンナー峠からプラッテンゼー経由ウィーンへ)
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エジプトへのセンチメンタル・ジャーニー(7)
あとで気がついたのであるが、強い東風が風上側から山岳群に吹き付け、横には通常の雲を形作り、風下側はまだ柔らかい南風が勝っていた。
この最後の2〜3分間の緊張は本当に耐え難いものであり、1分ごとに2000m級の山に登る心地であった。
しかし、幸運に助けられた。
まだ、充分に左右の山壁を見極められる視界が残っていた。
心に蟠っていた大きな荷が後方になだれ落ちるように軽くなり、そこを通過することが出来た。
乗客は、峡谷のような暗い壁の間を通り抜けるあいだ心配そうにそれを注視していた。
明らかに彼らは私より緊張していた。
その地点は地形などの条件と現実がよく知られており、慎重な人ならこのような危険にどうしなければならないか判っていた筈である。
このとき乗船していた商務相は、あとで操縦室に来て「穴から抜け出したことを神に感謝しなければ」と言っていた。
私はここを乗り越えずに済んだことを喜んでいた。
このあと、大変な悪天候に巻き込まれた。
プラッテンゼー(バラトン湖)上で非常に強い風が吹き、ウィーンとプレスバーグ(ブラチスラバ)の間をダニューブ(ドナウ)川が通過しているあたりでは対地速度が非常に遅くなり、ウィーンに着いたのはブリザードの吹き始める真夜中になっていた。
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[註1]プラッテンゼー
独語では Plattensee。ハンガリー西部にある中央ヨーロッパ最大の湖。ハンガリー語ではバラトン(Balaton)湖と呼ばれる。面積は592平方km、長さ77kmもあるのに水深は浅く、平均で5m、最大でも12.4mと非常に浅いので、Plattensee(平らな湖)と名付けられている。夏は湖水浴に適しており、多くのリゾート地がある。
[註2]挿絵の地図
挿絵の地図は Philip's POCKET WORLD ATLAS から部分転載した。
左辺中央のイタリアとオーストリアの国境にブレンナー峠が見える。右のハンガリーの大きな湖がプラッテンゼー(バラトン湖)である。
これを見ると、3〜4000m級の山がそそり立つアルプスを越え、オーストリアとスロベニアの国境線沿いにハンガリーに入り、プラッテンゼーを越えてプレスバーグ(ブラチスラバ)、ウィーンと大迂回をしたことが判る。
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