2007年06月24日
(飛行船:366) エッケナー博士とツェッペリン飛行船(22)
(「グラーフ・ツェッペリン」乗船風景:ツェッペリン・アルバム(タバコカード集)から)
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グラーフ・ツェッペリンの最初の飛行(2)
飛行船は、この大きな試験飛行に備えて詳細に点検・整備されており、100時間分の燃料が搭載され、20人の乗客・記者達が乗船していた。
誇張ではなく、画期的な意義ある実証飛行に飛び立つ準備が整った。
この飛行船は乗客を乗せて、速く安全に大西洋を飛び越えて、近代的な旅行らしく快適で楽しい旅に出発するのである。
そのときまで、ほかの形式の航空機では決して果たせない憧れの夢であり、我々は間もなくそれを実現することを信じていた。
この渡洋飛行が出来ると確信しており、さらに将来、強化・改良されて、心情的にも国際的にも、ZRⅢのときのように成功することを望んでいたのである。
私は、途中で命にかかわる危機に遭うとは夢にも思わず、飛行船の運命に関する心配を抱えながら数時間を過ごすと思っていた。
私の心配は既に前日、天気図を見ながら出発の検討をするときに始まっていた。
天候は、考えられる最悪の状態であった。
大西洋を横断するにあたって、厳しい課題は風力9、10の西からの暴風であった。
多くの汽船の遭難が報じられ、大型定期客船がニューヨークに24時間遅れて入港していた。
汽船の航路を辿る飛行は、この環境条件ではまったく愚かな選択であり、計画している飛行高度で時速70〜90キロの風に向かって進むと、航程の半分にも満たないアゾレス諸島まででも60時間以上必要となる。
飛行コースを、ジブラルタル湾、マデイラ、バーミューダと遠く南に迂回することを考えたが、およそ6千浬におよぶ、この異常に長いルートは気に入らなかった。
エアラインの速度は最も重要なメリットである。
誰がこれほど長いルートで速度を云々するであろうか?
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[註1]挿絵写真
この写真もタバコカードアルバムから転載したものである。
撮影日時は判らない。
飛行船は「LZ-127:グラーフ・ツェッペリン」で、格納庫内と思われる。
ハンドレールにはサンドバラストの袋が吊り下げられている様子が判る。
このバラスト袋は、人や物が載る度にそれに見合う重量毎に外される。
天国へのステップ(Himmelsteppe)と呼ばれた階段では1人ずつ乗客をチェックしている。入り口の右は厨房、左の大きい窓の2つあるところがラウンジ兼ダイニング、その後方にはツインキャビンが並んでいる。
手前のハンチングを被った一団は乗船が終わったら飛行船を外に引き出す曳航索に付いている地上支援員である。
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