2007年06月21日

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(飛行船:363) エッケナー博士とツェッペリン飛行船(19)

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(ツェッペリン・エッケナー義援金募集の絵葉書)

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(ツェッペリン・エッケナー義援金のワッペン)

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(義援金募集のポスター)

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 ZRⅢ(ロサンゼルス)の飛行(11)

次の仕事は大洋横断輸送用のツェッペリン飛行船を開発し、運用することであった。

しかしながら、そのためには政府の裏付けが必要であり、これを期待できるのは我々の航空方針に責任を持つ大臣と、すべての部署の官僚が適切に処理してくれることだけであった。

このように、周辺を見渡すと、皆 飛行船ではなく飛行機にばかり興味を示し、殆ど何も期待できない痛ましい状況であった。

飛行機は、世界中のすべての国が最も切望し、関心をもつ対象であり、ツェッペリンとその形式の飛行船を創り出した国でさえ、その赫々たる実績にもかかわらず、少なくとも航空専門家の社会では間違った考えに取りつかれているようであった。

ツェッペリン伯爵は、最初からこの意見と論争すべきであった。
私の見る限り、状況はあまり変わっていなかった。

現在は私もそう思うが、当時もおそらく、飛行機がまもなく大海を飛び越えることが出来るようになると考えていたことは正しいかも知れない。
しかし、この考え方の間違いは、未来に期待するあまりに、既に実現しているものを無視している点にある。

この時期に、この利用可能な方式のメリットをどれだけ引き出すことが出来るだろう?

私は10年前、ツェッペリン飛行船の開発成功を喜び、それ故に、その後渡米飛行の直後も含めた、多くの年月にわたって、この経験は生かされるべきであると断言することに躊躇しない。

しかし我々は、ヒンデンブルクの建造を決定し、それに政府の資金が下りる1934年まで待たなければならなかった。

少なくとも最初の時点で、政府から気前のよい出資が期待できないことが明らかになったとき、ドイツ人のツェッペリンに対する熱意をアッピールすることを思いついたので、1908年の「エヒターディンゲン義援金」と呼ばれたツェッペリン伯爵への寄付金と同じような人々の基金を発起することにした。

私は、嵐に飛行船を破壊されたあと、何の救いも期待できず打ちのめされた老伯爵に寄せられた1908年の義援金に、世間が某かの疑わしさを抱いていることを知っていた。

悲劇的な状況で人々の心情に訴え、愛と賞賛を引き出した。

現時点ではそのような悲劇的出来事はなく、すべての人々が同じことで再び熱狂するとは思えなかった。

しかし、私には成功に立ち上がるために残された手段は残っていなかった。

そこで、事務所を開設して「ツェッペリン・エッケナー義援金」と呼ばれる寄付金の管理運用を始めた。

私と、フレミング船長、フォン・シラー、ヴィッテマン、プルスなどアメリカ飛行の関係者と、技術部門の何人かの協力者の講演による遊説活動が展開された。

それは大変な仕事であった。

私自身、1925年・1926年には、およそ100回の講演を自分に課して、自分の体力的、精神的強靱さの限界に達していた。

おそらく、生涯で一番疲労困憊した仕事であった。

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[註1]ツェッペリン・エッケナー義援金
戦後のワイマール共和国は、連合国に対する戦時賠償や、200万マルク札・500億マルク札を発行せざるを得ないインフレで、何も期待できなかった。
エッケナーの講演はドイツ国内に留まらず、オーストリアからも声が掛かったという。
ドイツの代表的劇作家、ゲルハルト・ハウプトマンが趣意書の序を書いており、呼びかけ人のなかには後に西ドイツの首相を務めたケルン市長、コンラート・アデナウアー、作家のルドルフ・ヘルツォーク、ドイツ国民議会議長、トーマス・レヴァルト、国務大臣のヘルマン・ミュラー-フランケン、ドイツ銀行頭取ヤルマル・シャハト、哲学者オズワルト・シュペングラーなどが名を連ねていたという。

[註2]Z・E義援金への協力者
アメリカ飛行に乗り組んだ船長・航海士らの名が上がっているが、講演したかどうかは判らないが設計主任のデューア博士も有力な協力者であったと思われる。
彼もエッケナー博士と同じ頃、船長資格を取得していた。
現在、フリードリッヒスハーフェンのデューア工業専門学校や、ツェッペリンドルフの通りにその名を残している。

[註3]挿絵出典
何れも Brigitte Kazenwadel-Drews著 "Zeppelin erobern die Welt" から転載した。

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