2007年06月19日
(飛行船:361) エッケナー博士とツェッペリン飛行船(17)
(朝霧のニューヨークに到着した:ツェッペリン・アルバム(タバコカード集)から)
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ZRⅢ(ロサンゼルス)の飛行(9)
気圧計で高度150mまで降りたとき、降下を止めた。
気圧計(バロメーター)の指示が不正確かも知れないと思ったからである。
低気圧域に入っており、高度の読み違えにより海面に衝突するおそれがあった。
受け入れがたい状況であった。
気温は下がり、凍るばかりになっていた。
しかし、2時間後に徐々に薄らいで行き、10時には遙か北に瞬いているハリファックスの灯りが見えた。
これで、航海に関しては順調に終わる見込みが付いた。
現時点からニューヨークまでは880キロで、このまま青天なら何の苦労もない筈である。
早朝、ボストン上空に来た。
街は眠っているように見えたが、我々のために目覚めてくれた。
まだ、ずっと遠くにいるうちから、サイレンと汽笛が響き始めたが、我々には何が起きたのかよく判らなかった。
夜明けにはサンディ・フックの沖にいた。
フリードリッヒスハーフェンを離陸して77時間が経過していた。
湾と湾岸は薄い朝霧で覆われていたが、摩天楼の幻想的な影がその上に聳え、昇る朝日に輝いていた。
暗く何もない海から突然来た我々に、あらゆる言葉で祝福された圧倒的な巨大都市が敢闘的冒険心で、到来する外来者を迎えてくれたおとぎの国のような、実に印象的な絵のようであった。
ニューヨーク市民に、我々の飛ぶ姿を長時間見て貰えるように上空を巡航し、それから徐々に旋回しながら高度を3200mまで上げた。
それから、近くにあるレークハースト飛行船発着場に向かい、9時に到着した。
そこにはニューヨークから車や、30本の特別仕立ての列車で駆けつけた大群衆が待ちかまえていた。
彼らの歓迎は圧倒的に騒々しく熱狂的であった。
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[註1]サンディ・フック
ニューヨーク港入り口のベラザノ・ナロウズの沖に南から突きだした岬である。
客船全盛期に、北大西洋横断速度記録を競ったブルーリボン競争の速度を算定する起点・終点としてもよく知られている。
[註2]レークハースト
ニューヨークからハドソン川を渡ったニュージャージー州に設けられた飛行船発着場である。
「グラーフ・ツェッペリン」も世界周航などで頻繁に利用していた。
「ヒンデンブルク」の大惨事もここに着陸する際の出来事であった。
米海軍飛行船部隊のメッカでもある。
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