2007年06月18日
(飛行船:360) エッケナー博士とツェッペリン飛行船(16)
(米海軍巡洋艦上空を飛翔するZRⅢ)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
ZRⅢ(ロサンゼルス)の飛行(8)
アメリカ海軍は、我々を支援するために2隻の巡洋艦を派遣していた。
1隻はハリファックスの南約460キロの北緯40度近くに配置されていた。
もう1隻は、北緯45度に近いニュファンドランドの南東280キロの海上であった。
我々は、これらの艦から風向・風力の情報を得ようと接触を開始した。
長い実りのない努力の結果、真夜中近くになってはじめて接触できたが、そのときは時速僅か25マイルで前進することを決めた後であった。
南側の艦からは冷たい強風を、北側の方からは軽い南東の風を知らせてきた。
それで、低気圧域がニューファンドランドの南方にあると算定した。
その北を回ることに決め、ニューファンドランドの南端、レース岬に向けて北西に針路をとった。
激しい南西の風が、今度は横から当たるようになったがそれほどひどくなく、徐々に収まっていった。
昼にはとても静かになったが、それは低気圧域の中心に向かって進んでいたからであり、半時間後には軽い東風が進行に助勢し始めていた。
北西に針路を変えた地点から5度北のレース岬の南東、北緯44度線付近まで近付いた。
そこからボストンに向けて西に舵をとった。
船速は125キロ(67ノット)に上がっていた。
4時前に海面に横たわる濃い霧の中に突入した。
冷たい北東の気流が、ガルフストリームの暖かい海水に吹き付け、我々はその上空を飛んでいたのである。
見通しのきく霧の上に出ようとしたが、昇れども昇れども抜け出せず、とうとう1500mまで上昇した。
雲の上を行くことは美しい眺めであったが、何時までも楽しんでいるわけには行かなくなった。飛行船が何処を漂っているか判らないからである。
現在では使う必要がなくなったが、そのときは電波方向探知機を設置しておいてくれたことが有難かった。
海面を見るために降下した。
降下の危険性は判っていた。
我々の下の何処かに、霧に隠れたノバスコシアの山岳があるはずだった。
しかし、深い霧や雲の群れからノバスコシアの南を流れるガルフストリームの上空にいることを確信したのである。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
[註1]見出しの写真
見出しの写真は、William F. Althoff著 "Sky Ships" (Pacific Press刊)に掲載されていた洋上訓練中の写真から部分的に転載したものである。
[註2]電波探知機(略称:電探)
チャート上の既知点(基地)で発信する特定周波数の電波を、ループアンテナの方向を微調整して最も強い方向から発信方向を探る初期の無線航法支援機器の一つである。
第二次大戦でも夜間長距離飛行の誘導に使われていた。
微弱な電波をようやく掴まえて、これを頼りに飛行し、行けども行けども基地にたどり着けず、洋上や砂漠に燃料切れで墜落する飛行機も少なくなかった。
方向を示すのみで、ドップラーレーダーのように近付いているか遠ざかっているかが判らなかったからである。
ちなみにレーダーは電波探信儀と言っていた。
"(飛行船:360) エッケナー博士とツェッペリン飛行船(16)"へのコメントはまだありません。