2007年06月14日

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(飛行船:356) エッケナー博士とツェッペリン飛行船(12)

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(「LZ126(ZRⅢ)」を見送る群衆(1):「飛行船の時代」(関根著:丸善ライブラリー)から)

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(「LZ126(ZRⅢ)」を見送る群衆(2):B. Kazenwadel-Drews著"Zeppelin erobern die Welt"から)


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 ZRⅢ(ロサンゼルス)の飛行(4)

乗組員とアメリカ海軍の受領委員は飛行船に乗り込み、ガソリンとバラストが、想定した天候状態に基づいて算定された飛行に充分な量、搭載された。

地上支援員は操船索保持して飛行船を引き出す準備を整え、大観衆は興奮してスタートの合図を待った。

しかし、その合図は出されなかった。

飛行船を引き出す担当技師が運転室に来て、飛行船は既にウェイオフしているが、重いと報告してきた。

私は数百キロのバラスト水を投棄させたが、それでも飛行船は重い。

さらにバラストを投棄する必要があると思った。

この状態になった原因は、暖かい気温で霧が流れ込み、それが冷やされたことにあった。
暖かい空気は冷たい空気より浮力を減少させる。

既に必要最小限度まで投棄して、必要量の限界に達していたので、それ以上バラスト水を犠牲にすることは好ましくなかった。

それで、ガソリンを捨てざるを得なかった!

しかし、それでも400〜500キロ程度のことであり、気温は上がり続けていたので飛行を明朝まで延期する決心をした。

待ちかまえている群衆はあざけり、人々は我々が「平静に」と言っているのを聞くのが精一杯であった。

新聞記者は走り回って電話で新聞社に知らせていた。
離陸の感動を伝えるニュースを待ちこがれ、この事業が 我々の確信によって決定された予定通りに進行することを興奮しながら期待していた大衆は、みるみるうちに失望に変わった。

私は、そのような大衆の反応が予測されたので「飛行延期」と発表する勇気が持てるまでに長時間躊躇した。

私は生涯で、これほど難しい判断に立たされたことは少なかった。

しかし、今日でもその決断が出来たことを嬉しく思っている。

翌朝、ふたたび我々は準備にかかったが、あの暖かい朝の霧を避けて1時間早めた。

そして今度は全備重量で離陸することに成功した。

出発は素晴らしくうまく行った。

高さ200mの雲を突き抜けると、そこは光り輝く霧の海が太陽に輝いており、南にスイスアルプスがバラ色に連なっていた。

我々はついに、長い間待ち望んだこの「偉大な日」を喜んだ。

ツェッペリン飛行船は何が出来るかを示そうとしていた。

我々は霧の海上でバーゼルに進路をとった。

間もなく霧が晴れ、フランスが我々の眼下で陽光に輝いていた。

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[註1]
10月13日(火)も早朝から霧が深く、良い写真は残されていない。
何れも飛行船は不鮮明で、辛うじて見送りの雰囲気が伝わってくる。

[註2]ウェイオフ:
飛行船の船体重量が適切な値かどうかチェックするための船体重量測定のことで、離着陸の前には必ず行う重要な測定である。
飛行船は浮力と重量の差を殆ど零に調整されており、人が1人乗り込むごとにそれに見合う重量のバラスト水を放出する。
着陸の場合もランディングギアに過負荷が掛かるので必要である。
「ヒンデンブルク」の事故は取材中の映写フィルムに記録されているが、繋留柱に近付いたあと、重量調整のためバラスト水が放出され、その直後に船体後部から発火している。

[註3]
邦文ではこれまでのどの本も10月12日、予定通り朝霧の中を出発したと書いており、この出発延期について触れられたのは見たことがない。
新聞はしばしば予測で原稿をつくっている。
「グラーフ・ツェッペリン」の世界周航時、最初の寄港地霞ヶ浦からロサンゼルスに出発する際、トラブルで出発が1日遅れたが、このときも多くの新聞が、予定の1929年8月22日『薄暮立つ午前4時歓呼の声高く霞ヶ浦を』出発したなどと報じていた。
同船が出発したのは翌23日の午後3時過ぎである。

[註4]
新聞記者とカメラマンが船尾に潜んでいたと記述した本もあるが、人が2人も隠れていればウェイオフで必ず異常が検出され、船内捜索が行われるはずである。
にもかかわらず、「グラーフ・ツェッペリン」のアメリカ往復航でも世界周航でも頻繁に密航者が見つかっており、「密航者は発見次第、パラシュートで地上に追放する」と宣言したと紹介されている。

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