2007年05月07日
(飛行船:317) 丁亥飛行船紀行(3) チューリッヒ(2)
湖岸には沢山の人が出ていた。
遊覧船も、ヨットも、足漕ぎボートも浮かんでいる湖面には遠くで噴水も上がって夏祭りのような賑わいであった。
シルクハットをかぶった人が来て、何か準備をしていると思ったら、手回しオルガンが鳴り始めた。
河や湖では波やうねりはなく、風が吹いても漣が立つ程度なので船はシア(舷弧)もフレア(船首の波返し)もなく、外洋の船に較べて異常に長い。
これはチューリッヒ湖ばかりでなく、ボーデン湖も、ライン河やドナウ河の遊覧船にも共通している。
チューリッヒ湖にリトマ川の流れ込む北端にチューリッヒの街があり、その湖岸はミテン・ケー、ゲネラル・グイサン・ケー、ウート・ケーなどと名付けられている。
ケー(Quai)とは英語のキー(quay)と同じく河岸・海岸・埠頭のことで、シンガポールのリバークルーズ乗り場もクラークキーと言う。
国際会議場前のゲネラル・グイサン・ケーから、オペラハウスの建つウート・ケーに渡る、その名もケーブリュッケという橋が架かっている。
バスも電車も走るのでキャンバーをつけるわけにも行かず、普通の低い橋である。
車も歩行者も気付かずに渡ってしまいそうなこの橋の銘板には1882〜1884年に建造され、1939年に増幅、1982〜1984年に近代化のため改装されたとある。
1世紀以上にわたって市民の足を支えてきたのである。
この橋の架かるリトマ川には遊覧船の発着場やモーターボートの繋船場が多いが、遊覧船はマストを倒して潜っているようである。
無論、ヨットは通れない。
そのゲネラル・グイサン通りを赤いスポーツカーが走り抜けて行った。
橋を渡ると街のシンボルの一つであるグロスミュンスター、チューリッヒ大学、スイス連邦工科大学、中央図書館、オペラハウス、トーマス・マン記念文庫などが散策できる範囲にある。
橋を渡ってその上流側を見たところである。
中央の尖塔はフラウミュンスター、右の尖塔はザンクト・ペーター教会で、対岸の船溜まりはシュタットハウス・ケー、右に見える橋はミュンスター橋である。
こちらにもマルクトプラッツに市場やオープンカフェが続いている。
白花、赤花のマロニエが初夏の到来を告げていた。
グロスミュンスターの塔は見上げるほど高い。
この傍の坂道を上がると、美術館や音楽学校、州立裁判所、大学などがある。
ラトハウスブリュッケを渡っていると橋の下から遊覧船が現れて、乗り場に寄せて行った。
如何にも橋を潜って走り回る平坦なスタイルである。
下流に見えるのがミュンスター橋、そのさらに下流に先ほど渡って来たケー橋がある。
歩いているうちに、何処かの中庭に出た。
ここでもマロニエの下で初夏の午後を楽しんでいた。
パラデプラッツからトラムに乗ってホテルに帰った。
午後8時と言うのにまだ明るい。
日が落ちたのは9時半くらいであった。
緯度の高いところでは夏の日は長い。
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