2006年10月12日
ヘルマン・ヘッセ著「空の旅」
ヘルマン・ヘッセの「空の旅」が届いた。
株式会社ゼスト刊:V.ミヒェルス編・天沼春樹訳、1999年4月10日初刷である。
目次を見ると「空の旅」「そして近しいものすべてが遠ざかった」「訳者あとがきにかえて」そして最後が「ツェッペリン年代記」となっている。
「空の旅」はヘルマン・ヘッセの短編集である。
6編の短編が収められている。
最初が「素晴らしい空中散歩」(本文8ページ)で招待されてツェッペリン飛行船 LZ-10「シュヴァーベン」に体験乗船したときの印象が綴られている(1911年)。
2番目は「雲」と題した4ページのエッセイ、3番目は「白い雲」という12行の詩である。
4番目は「飛行機に乗って」という12ページあまりの短編(1913年)、5番目は「飛行機で天駈ける」という12行詩、最後が「空の旅」(1928年)で締めくくられている。
「空の旅」は本文中で『もし私が暴君であったら、私の国にこのがさつな機械を導入するのを禁止するだろう』と書いているほどの鉄道ぎらいなヘッセが人に誘われてシュヴァーベンから北ドイツのブランデンブルク州まで鉄道旅行し、そこからルフトハンザで帰る旅行短編である。
「そして近しいものすべてが遠ざかった」はこの本の編者である、ヘッセ研究の権威者フォルカー・ミヒェルスの著述によるヘルマン・ヘッセが19ページあまりにわたって述べられている。
特にヘッセと飛行機・飛行船との関わりが生き生きと描かれている。
「訳者あとがきにかえて」は当時中央大学文学部兼任講師であった天沼春樹氏がこの本を翻訳するに至ったいきさつがツェッペリンNTとの関連を含めて16ページに記述されている。
最後の「ツェッペリン年代記」が80ページを超し、活字も小さくして分量的にはこの本の主要部と言っても良い。
ツェッペリン家がヴュルテンブルクのフレードリッヒ王に迎えられて爵位を得るところから始まり、フェルディナンドの幼年期・少年期、アメリカのリンカーンに謁見した話など逸話も多い。
特に「LZ 2」「LZ 4」の遭難の模様は貴重な資料である。
この本にはA5版よりやや小さいページを使って18頁の写真やイラストが載っている(ほかに挿絵1駒)そのうち6駒がツェッペリン飛行船で、そのほかは著者の写真や銅版画を除いて飛行機で埋まっている。
この本もゆっくり時間を掛けて読もうと思っている。
"ヘルマン・ヘッセ著「空の旅」"へのコメントはまだありません。