2006年07月29日
(飛行船:80) 『飛行船の黄金時代』 第6章:グラーフ・ツェッペリンの南米飛行(6)
(前回からの続き)
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海岸沿いのある場所では古く廃棄された砦が見え、小説「ボージェスト」[訳者註]とフランス外人部隊の武勇伝を想い出した。
ふるい砦のまわりには生命を感じさせるものはなく、ただ内外に続く轍の跡がどこから来たのでもなく、何処へ行くのでもないことを物語っていた。
砦は孤立していた。
植物も住居もなく、砂漠に囲まれた不気味な静けさだけがそこにあった。
殆どの沿岸地帯はサハラ砂漠に呑み込まれていた。
人が居たとしても、この不毛な荒れ地で生活は成り立たなかったが我々は遊牧民を見た。
島の長くゆったりとした上衣を着てターバンを巻き馬に乗っており、それぞれがライフルで武装していた。
「グラーフ・ツェッペリン」は美味そうな獲物に違いなかった。
彼等が我々を撃っているのが判った。
最初、一吹きの煙が見え、数秒後にライフルの銃声が聞こえた。
決して飛行船に当たる筈はなかったが、確かに彼等が近くにいたことは事実である。
(続く)
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[訳者註] ボージェスト
英国作家パーシヴァル・クリストファー・レンが1924年に発表した小説の題名である。
1926年に映画化されているが、訳者の年代では1939年にゲイリー・クーパー主演でリメークされたものが思い浮かぶ。
根強い人気があるようで1966年にテリー・サラヴァス主演で再度リメークされている。
今世紀初頭のサハラ砂漠を舞台にフランス外人部隊が繰り広げる死闘と人間模様を描いたアクション映画である。
写真は著者の撮影したアフリカ海岸に捨て残された砦である(同書:P53)。
周辺の何処にも生命の兆しは見えず、砦からの轍の跡も何処へも辿り着くのか判らない。
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