2006年01月13日

*** 当ブログは2014年5月末に引っ越しました…新しい「紺碧の海」はこちらです ***

(飛行艇の時代:41) ボーイング314の解剖図

このカテゴリーの前号でショートS23「エンパイア」の載っていたムック「超巨人機エアバスA380」にボーイングB314「クリッパー」の解剖図が掲載されていた。
誰の描いたものか判らない。
登録記番号は1号艇「NC18601)」である。

これをボーイング社がパン・アメリカン航空に引き渡すにあたって作成したもの(出典:イカロスムック「ボーイング旅客機)と較べてみる。

B314A.jpg

コックピットは2階で、客室は階下にある。
階下には4つのコンパートメントと、ダイニングルーム・カクテルラウンジ・男女別トイレット兼更衣室があった。
初めて水洗トイレを実用化したことでも知られているが随分苦労したようで路線に就航してからもトイレの故障が発生したようである。
艇体が船型のため、コンパートメントは後部に行くに従って少しずつ高くなっており、4レベルに分かれていた。

ボーイングの発表した図(モノクロ)と「超巨人機・・・」に掲載されたもの(カラー)には幾つか異なるところがある。

B314Afore.jpg


B314Cfore.jpg

2階に上がる階段であるがモノクロ版は前部コンパートメントの後方に螺旋階段があるが、カラー版ではそこにかなり広いギャレー(厨房)が描かれている。
(カーテンの後に描かれているのは螺旋階段のように見えるが)

それに艇体中央部のスポンソンもカラー版では省略されている。

カラー版では飛行中に1番エンジンのナセルに機関士が入って作業しているが、これはあり得ないと思う。
航空機のエンジンも船舶に倣って左から第一エンジン、第二エンジンと呼ぶ。
B314の場合、エンジンの吸気口に海水を吸い込まないようにエンジンは高翼の前縁に並べられているので整備作業のとき艇内から翼内部をたどってエンジンにアプローチすることは出来るが飛行中は危険である。

モノクロ版では垂直尾翼が1枚描かれているが、カラー版では左右に増設されて3枚の垂直尾翼が描かれている。

これはどちらも正しいのである。

実はこの314は、パン・アメリカン航空の要求仕様に応じてボーイングが設計したものであったが、ボーイングは当時試作していた超大型爆撃機XB-15の主翼・尾翼を流用してこれにあわせて艇体を設計したのである。
XB-15に較べて大きくなった艇体に対して方向安定板(垂直尾翼)が相対的に過小で試験飛行で針路安定性が不足することが判ったのである。
対策として垂直尾翼を左右の2枚にしたがそれでも充分でなかった。
結局、中心線の垂直尾翼とあわせて3枚になったのである。
(2005年7月25日付「(飛行艇の活躍した頃:19)ボーイングB314垂直尾翼の変遷)」参照方)

帆足孝治著「飛行艇の時代」によれば1号艇が「ホノルル・クリッパー」2号艇が「カリフォルニア・クリッパー」、3号艇が「ヤンキー・クリッパー」と記載されているが、石川潤一著「旅客機発達物語」では1号艇を「ヤンキー・クリッパー」、3号艇を「ディキシー・クリッパー」としてる。


Comment on "(飛行艇の時代:41) ボーイング314の解剖図"

"(飛行艇の時代:41) ボーイング314の解剖図"へのコメントはまだありません。