2005年09月06日
飛行船概史(7) 補遺(飛行艇時代への序奏)
飛行機でも船でも自動車でも、乗り物に限らず新しいものを作ることはそれほど難しいことではない。
科学史上、発明と言われるのは一般に独創性が高くアイデアを実現したものを指す。
ライト兄弟の操縦可能で持続飛行の出来る飛行機はこれに該当する。
しかし、飛行船や飛行艇の場合はどうであろうか?
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陸上の飛行機は離陸に必要な浮力を得る速度になるまでに長い滑走路を加速しながら全力で走らなければ離陸できない。
何処にも都合の良い滑走路があるとは限らない。
しかし、湖や内水海面であれば助走距離を気にしなくても浮力がつくまで走ることが出来る。
橇や車輪のような降着装置に代わってフロート(浮:浮舟)を付ければ水上機になる。
現に、スカンジナビアやカナダのような池や湖の多いところでは今でも水上機が沢山活躍している。
機体の中心線の下に一つのフロートを付けた単浮舟式と左右にフロートを付けた双浮舟式がある。
単浮舟式の例は「生い立ちの記(Appendix-1)」に写真を載せた零式水観である。
イラストは「船橋当直日誌:淡水の零観(6月15日)」に掲載した。
静止状態では中心線だけで支持するのは不安定だから翼端に小フロートをつける。
但し、滑水中に水面に当たると転覆するので計画喫水線より上につけている。
このため静止状態では左右どちらかに傾いている。
双浮舟式の例は、宮崎アニメの「紅の豚」をご存じなら、ポルコ・ロッソの好敵手ミスターカーチスの乗機「カーチスR3C−0:(幸運のガラガラヘビ)」と言えば簡単にお判りだろう。
ここでは講談社ヒットブックス「紅の豚」メモリアルからカーチス機を転載する。
前置きが長くなってしまったが、水上機の機体とフロートを一体にしたのが飛行艇である。
従って、飛行艇には主フロートはない。その代わり機体部分を水密構造にしてフロートの機能を持たせ「艇体」としたものである。
殆どの飛行艇では艇体が1つであるが、サボイアマルケッティS55(「(飛行艇の活躍した頃:APPENDIX-1参照」)のように双艇体の飛行艇も存在した。
このように既存の製品が段階的に改良されたような場合は発明と呼ばないことが多い。
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ライト兄弟の飛行機の場合、リリエンタールなどハンググライダーのような滑空機は既に存在していた。
リリエンタールのグライダーには舵面はなく、体重の移動で操縦してた。
ライト兄弟は文献でそれを知っていた。
ライト兄弟のグライダーは自動車用を改良した自家製エンジンを搭載し、チェーンで推進式の2基のプロペラを回転させて推力を得た。
エンジンに自力で離陸するだけの出力がなかったので滑車とウェイトで発進時に助力する移動式発射台を考案した。
腹這いに乗った人間が、操縦桿を傾けることで複葉の主翼にひねりを発生させ、これにより左右方向への操縦を可能とした。
「離陸し、操縦可能で、持続飛行のできる」飛行機を実現したことの独創性が認められて、発明が成立したのである。
ライト兄弟のライバルであったグレン・カーチスは、フロートをつけた水上機や水陸両用機を開発し、最初の飛行艇も彼が開発に成功したものである。
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硬式飛行船の場合、ツェッペリンが初めて開発したわけではない。
ハンガリー生まれのダヴィッド・シュヴァルツが1897年に骨組みと外皮に当時生産開始されたばかりのアルミニュームを使った硬式飛行船を開発し、彼の急死により未亡人が試験飛行に持ち込んでいる。
しかし、シュヴァルツの飛行船は開発に成功したとは言い難い。
また、ツェッペリンの飛行船が知られるようになってから、ドイツのシュッテ・ランツの飛行船も「SL1」や「SL2」など20隻以上建造されている。
イギリスでもアメリカでも硬式飛行船は建造されたが「ツェッペリン」が「飛行船」の同義語になっていた。
お久しぶりです。
今日はお願いがあってお邪魔しました。
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