2005年07月02日
(生い立ちの記:14) オーダー
企業にはオーダーというものがあり、全ての企業活動はオーダー毎に計上される。
鋳造・鍛造などの設備も、車両も船舶も従業員の作業時間も、全てどの工事に関わっていたかで原価が集計されるのである。
勤務時間は0.5時間単位で、各オーダーに人件費が計上されが、その単価は決して低くない。
本人に支払われる時間当たり賃金の2.5〜3倍くらいにはなる。
退職金のための引当金や福利厚生費のほか、土地建物の原価償却や電力その他がチャージされる。
その上に管理職・総務・経理・資財など間接部門のほか、直接生産工事に携わらない本社機構など、個別に各工事に計上できない費用もすべて賄わなければならないからである。
人件費の時間単価が5000円であれば、10人で1時間会議をすると、その50000円をどれかの工事オーダーに計上しなくてはならない。
不況で仕事が乏しくなると管理者は大変である。
その部門の作業時間はどれかのオーダーに計上しなければならないから、手持ち工事の何れかに計上する。
その結果、割当予算をオーバーし、赤字に転落する。
大きな案件を失注すると、その案件に掛かったオーダーはもろに赤字要因になる。
忙しい職場の有能な社員は、一定期間内に3件も4件も、場合によってはそれ以上の仕事をこなす。
それぞれの工事には納期があり、各ジョブステップ毎に期限が設けられているからである。
その結果、それぞれの案件に計上される時間(原価)は少なくて済むので予算内で仕事が完了する。
設計部や工作部だけでなく、営業や資材の人件費もオーダーに直課される。
もちろん、各部にも工事オーダーに関わらない間接作業もあるので部門費という費目も用意されている。
その部門の生産の8割を2割の従業員が稼ぎ、残りの8割の従業員の生産は、合わせてその部門の2割にしか寄与しないと言われている(パレトーの法則)。
見習いのうちは、新造船の設計のような仕事が効率よく出来ないので、試験研究工事とか学会活動(各種委員会の資料作成やそのための計算/実験、それに委員会出張など)を生産工事に適度に混ぜて与えられていた。
配属直後の見習いのうちに、船体固有振動数がディーゼル主機の常用回転数に近く、共振するおそれのある専用船の振動数を推定するために、大きな図面を何枚も携えてN研究所に10日余りの出張に出掛けた。
そこには、まだ日本で珍しかった電子計算機があったからである。
これが、コンピュータとの出会いであった。
写真は、後年の設計室の資料写真である。
入社当時はエアコンもなかったので夏は窓を開け、シャツを脱いでアンダーシャツで仕事をしていた。
但し、ランニングシャツ姿での仕事は認められなかった。
"(生い立ちの記:14) オーダー"へのコメントはまだありません。