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ダンス


船内イベント (Entertainment)


はじめに

ウェルカムパーティ

セイルアウェイパーティ


(以下、順次掲載予定)

はじめに

 航行中の客船では乗客を退屈させないように様々な催しが開催される。乗船して出航時刻が迫ってくるとプロムナードデッキでセイルアゥエイパーティとなる。若手オフィサーが出航の銅鑼を鳴らしてデッキを周回する中、シャンパンがサービスされ、歌ったり踊ったりして互いに出航を喜び合うのである。明くる日、さらにその翌日が航海日であればキャプテンの招待になるウェルカムパーティが開催されるかも知れない。

 ステージではミュージカルショーやコンサート、ビンゴ大会や手芸教室など盛り沢山のイベントが展開される。何時だったか「飛鳥」で名古屋から小笠原に行ったときに講演会に出席したところ、講師が「この時間に5つもイベントの予定されているなか、私の講演を聴きに来て戴いて有り難う御座います。」と挨拶をしてから話を始めたのを覚えている。

 国際的に義務づけられている避難訓練も楽しいイベントの一つとなる。ゲストエンターテイナーやテーマクルーズの講師と同じボートになることもある。

 こんな調子であるから、まともにつき合っていては身体が幾つあってもつき合いきれない。そのため、ベッドメークの時に配られた明日のスケジュールを見渡して参加するイベントにマークをつけて休むのである。

 ここでは代表的なイベントを幾つか紹介して見ようと思う。最初はやはりウェルカムパーティであろう。


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ウェルカムパーティ

 乗船した翌日(しかもその次の日が航海日であれば)、キャプテンの招待になるウェルカムパーティが予定されることが多い。乗船当日はキャビンやパブリックスペースを見て回ったり、宅急便で届けられキャビンに先回りしていたスーツケースの衣装をワードローブに納めたりするのでドレスコードは乗船時の服装に合わせてインフォーマルと指定されることが多いからである。

 乗船当日、いきなりフォーマルにするとドレスをプレスに出したり美容室で髪を整えたりする時間がなく、忙しすぎるばかりでなく何かの手違いでスーツケースや鞄が部屋に届いていない可能性も考えられる。それでパーティは通常、翌日開催されることが多いのである。もっとも、我が国で大手の海運会社では乗船当日ウェルカムパーティを行う船もある。

 パーティの予定時刻が近づくと、会場に通じるフロアには正装の紳士・淑女がお行儀良く並んで和やかに時刻の到来を待っている。この時はやはりご婦人方が堂々としていらっしゃる。殿方は、ウィングカラーのひだ付のシャツにブラックタイを締めてカマーバンドを巻きタキシードにオペラパンプスを履いていても、どことなく気恥ずかしそうで側で見ていても微笑ましい場合もある。

 やがて、入口でいつもの制服からドレスに着替えたソーシャルオフィサーからキャプテンに紹介され、挨拶を交わしてにっこりと記念写真に収まるのである。正装のオフィサーが整列して迎える中を案内されて着席する。2〜3層ぶち抜きのホールではミラーボールが回り、ステージでは専属バンドがダンスミュージックを演奏している。スタイルの良いウェイター/ウェイトレスが聞きに来るのでシャンペンか何かを注文する。

 フロアではダンスインストラクターが踊っているので何組か誘われるように中央に出て行く。少し落ちついて回りを眺めていると雑誌やテレビで見掛ける人が座っていることもある。後から隣に着席する人や偶然視線の逢った人には微笑で挨拶を交わす。船では笑顔と挨拶を忘れてはいけない。

 何曲か演奏が続き、やがてクルーズディレクターの紹介でキャプテンが中央に現れ、この船へ、このクルーズへようこそと歓迎の挨拶が行われる。キャプテンのスピーチの終わりにスタッフキャプテン・チーフエンジニア・ホテルマネジャー・チーフパーサー・クルーズディレクター・ドクターなど各部の責任者が紹介されてパーティが終了する。

 初めて乗船した人はここで客船に乗っていることを実感し、レピータは、前に乗船したときにお世話になったキャプテンやチーフパーサ、クルーズディレクタ、ソーシャルオフィサなどの誰かに「お帰りなさい」と迎えられると「また来て良かった」と思う。こうしてクルーズに取りつかれてしまうのである。



セイルアウェイパーティ

 客船に乗ったと言う実感を最初に覚えるのはセイルアウェイパーティであろう。クルーズの出港時に若手オフィサーがプロムナードデッキを鳴らして巡回する銅鑼は楽しく華やかな雰囲気をさらに盛り上げる効果がある。シャンパングラスを片手に見送りの人に笑顔で手を振っていると、いつの間にか本船は岸壁を離れており五色のテープが伸びきってやがて宙に舞う。このテープは、進水式の支綱切断時にくす玉から飛び出して上空を旋回する伝書鳩とともに日本人のアイデアであると聞いたことがある。最近は環境保全の見地から気象状況などによって自粛する場合もあるようであるが量も知れているし、個人的には廃油や排ガスの野放し・垂れ流しに較べると可愛いものであると思っている。

 昔、洋行と言っていた時代には悲壮感溢れる場面であろうが最近のクルーズでは明るく楽しい最初のイベントである。

 このときは専属のバンドが演奏するなかで歌ったり踊ったりしてこのクルーズの始まりを喜び合うのであるが、初めて乗船した船客は飲み物のグラスを片手に遠巻きにして見学していることが多い。これを一緒に参加して貰って盛り上げるのがクルーズスタッフの離岸最初の仕事である。若く元気のカタマリのようなクルーズスタッフが笑顔いっぱいで踊り歌い、乗客を誘って雰囲気を高めて行く。クルーズディレクターもソーシャルオフィサーも時にはレストランマネジャーも参加している。

 但し、この場にキャプテンは現れない。離岸した港内は海上交通も激しく事故が起こりやすいのでキャプテンはブリッジで全体状況を把握した上で操船の指揮を執っているのである。船首のチーフオフィサー、船尾のセカンドメート、機関室の当直エンジニア、岸壁や沖で支援するタグボート等とワイアレスで連絡を取りながら狭い水路を出航するまでは緊張の連続である。法令に基づいて港湾や水路では状況を知り尽くしたパイロットに操船を委託するが、緊急事態に即応するために総責任者としてブリッジを離れることはない。離岸直後に遅れてきた乗客をタグに乗せて貰って海上で収容したのを目撃したこともある。その後、ファクシミリで送られてくる天気図を見て航路上の海象を予測し、針路を指示して当直に後を委ねて乗船客に挨拶をすることが出来るのである。

 客船でも軍艦や専用船のように船内放送を頻繁に行うものもあるようであるがハイグレードな客船では船内放送は極力控えられる。昼寝や食事や読書の雰囲気を壊さない配慮である。少ない私の経験では国際法規で義務づけられているボートドリルのほかでは数える程しか思い出さない。「飛鳥」に最初に乗船した日本一周クルーズで終日航行の初秋の夕暮れに昼間のイベントが一段落した夕食前、展望デッキで柔らかい風を楽しんでいたときブリッジから放送で右舷に屋久島の宮浦岳が見えると知らせる放送があったのと、小笠原クルーズに参加したとき父島周辺で鯨のブローが見えると案内があった位である。

 セイルアウェイパーティに話を戻そう。若さと元気で何の屈託もなさそうに広いプロムナードデッキを埋めた人を楽しませているクルーズスタッフ達の仕事ぶりを垣間見たことがある。バンドの伴奏で皆で歌を歌っていたときのことである。一瞬、制服のヤングレディの一人が肘で隣の同僚の脇を突いたのである。見間違えたのかと見直したが二人のスタッフは何事もなかったように、にこにこと手拍子を打っている。一寸した気の緩みを同僚に注意されたのであろう。乗客のいるところでは彼女らに休憩時間はない。

 クルーズスタッフの一人に石橋千代子と言う人がいた。リピータ向けの機関誌にスタッフの紹介欄があり、「寝ているときも、お腹の痛いときでも、怒っているときでも笑っている、笑顔の印象的なクルーズスタッフ」と読んだことがある。確かに笑顔の素晴らしいお嬢さんであった。何事にも全力で取り組むあの笑顔が人を引きつけるのであろう。クルーズで乗り合わせたのは2〜3回だったと思うが、家内もすっかり意気投合してしまった様である。「秋には広島に行くので時間が出来たら電話して良いですか?」と言っていた。そのとき彼女はソーシャルオフィサーを勤めていたが家内は体調をくずしていて逢うことは出来なかった。その翌年、屋久島・沖縄・台湾方面に行くクルーズに乗ったが下船して大阪にいると言うことであった。

 セイルアウェイパーティの最後にドリンクサービスについて一言。乗船してカジュアルに着替えて外国人ウェイターやウェイトレスのサービスするグラスのドリンクは、これからクルーズに出ると実感出来るので好きである。あれが紙コップや缶入りでは戴けない。まるでフェリーである。ここでサービスされる飲み物はシャンパンやソフトドリンクが多いがクリスマスクルーズなど冬場のホットワインもなかなか良いものである。


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