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マリナーズクラブ

映画劇場 (Movie Theater)


はじめに

『麗しのサブリナ』

『成金泥棒』

『めぐり逢い』


(以下、順次掲載予定)

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はじめに

 このページでは往年の20世紀フォックスの名画「めぐり逢い」に代表される船旅を舞台にした映画の論評や感想、さらに普通の人なら見落とすようなワンショットに写っている客船など映画やビデオに関わる客船を取り上げて見ようと思います。

 「こんな映画があるよ」とか、特定の客船の紹介ビデオを入手したとか、このページに関する情報やご意見をお寄せ下さい。

 先日発売になった隔月刊クルーズ情報誌「Cruise」3月号(9巻2号)では読者のページ「テーマトーク」で「客船が登場する映画」が取り上げられていました。予想された通り上述の「めぐり逢い」に関する投稿がありました。第1回としてA.ヘップバーンがH.ボガードやW.ホールデンと競演した「麗しのサブリナ」を取り上げさせて戴きました。


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『麗しのサブリナ』

 先年リメークも上映されたパラマウントのこの名画に関しては私より詳しくご存じの方も多いのではないかと思います。

 A.ヘップバーンの主演映画として日本では「ローマの休日」の次に上映されました。前作でヘップバーンの妖精のような魅力にとりつかれた日本の若いお嬢さん達の間に思い切ったショートカットが大流行しているさなか、ポニーテールのサブリナが現れたのものです。早速これを取り入れようとしても髪はそう早くは伸びてくれません。もっとも、映画の中ではパリから帰ったときはショートカットになっていました。

 ニューヨーク、ロングアイランドの豪邸に住むララビー家のお抱え運転手フェアチャイルドの一人娘サブリナは年頃です。花嫁修業のためパリの料理学院に行っても、プレイボーイの次男デビッドのことが忘れられません。

 2年後、料理学院を卒業して見違えるようなレディになってニューヨークに戻って来ます。

 垢抜けて帰ってきたサブリナにデビッドはすっかり参っていますが、兄ライナスの経営するララビー産業の新規事業にとってこれが障害となるのです。実はララビー産業では取得した特許でプラスチック製造を事業化する計画が具体化しており、原材料のサトウキビを確保するため、プランテーションと協定を結ぶ必要があるのです。このため、プランテーションの農場主の愛娘とデビッドの結婚が事業の大きな布石となるのです。

 このため、事業の邪魔になるサブリナをデビッドから引き離し、客船リベルテに乗せてフランスへ送り返すためにライナスはサブリナに近づきます…

 この映画ではララビー産業の社長室の大きな窓からハドソン川を出港して行くフレンチライン(C.G.T.)のリベルテ(オイローパの後身)の姿が印象的ですが、あの社長室には大きなケースに入った立派なモデルシップがあります。2本煙突の立派な客船で、重要なシーンのバックに何度か登場します。どなたかあのモデルシップが何かをご存じの方は是非教えて戴きたいと思います。

 映画の山場でデスク上に無造作におかれた「French Line」という丸ゴシックのロゴも懐かしいチケットも雄弁な小道具でした。フィナーレに近く、プロムナードデッキでサブリナがペットの子犬と日光浴をしているデッキチェアは今では懐かしい木製で当時の雰囲気を現していたように思います。


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『泥棒成金』

 2本目としてヒッチコック監督の「泥棒成金」を紹介します。いつも画面に登場する監督のヒッチコック氏は、この映画では主役が警察の目をかすめて逃げるバスの乗客の一人として登場します。

 グレース・ケリー、ケリー・グラント主演のパラマウント映画「泥棒成金」では冒頭、タイトルバックの旅行社のショーウィンドウに立派なモデルシップがあります。

 堂々とした客船で主船体は黒、上部構造は白、船底塗装はベンガラ色で2本煙突のファンネルマークは白地に赤の二引きのように見えました。それに黒塗りの船体には上甲板と思われるレベルに鮮やかに1本ホワイトリボンが引いてありました。

 もしそうであれば日本郵船の「浅間丸」か「龍田丸」ということになります。これもご存じの方があればご教授願います。

 この映画ではケリー・グラント扮するジョン・ロビーがグレース・ケリーのアメリカ娘と筏のそばの海上で会話する場面で、背景にアメリカン・エクスポート・ラインの客船『コンスティテューション』(遠景なので姉妹船の『インディペンデンス』かも知れません。)が沖泊りしていました。この映画のロケの際、彼女がモナコ国王レイニエ三世に見初められてハリウッドから輿入れしたのは「コンスティテューション」であったことはよく知られているところです。

 船に乗ると稀に、会食の席などで洗練されたマナーや、気の利いた会話にその人の豊かな人生を感じることがあります。著名なホテルのレストランマネジャの話を何かの雑誌で読んだのを覚えています。そのなかで取材記者が「ご経験の範囲で一番スマートで美しく食事をされた方はどなたですか?」と質問したのに答えて「グレース・ケリーさんです」と答えていました。

 「なぜですか?」と聞かれて、お皿の上でナイフやフォークを巧みに扱って食べ物を適当な大きさにして、爽やかなリズムで口に運ぶから、という意味のことを答えていました。

 そう言えば私など切った肉片をフォークに刺したままテーブルメートと話したりしなかっただろうかと苦笑しました。

 同席者に適切な話題を選ぶとか、不必要な音を立てないようにとか、黙々と食べないようにとかのマナーは教えることが出来ても、上品でスマートな食事のしかたは即席で教えたり伝えたり出来ないような気がします。その人の生い立ちや生活信条がにじみ出るのではないかと思います。

 グレース・ケリーは知的で美しく、私の好きな女優の一人でした。

 『インディペンデンス』と『コンスティテューション』は最近までハワイでワンウィーククルーズに従事していましたが、「コンスティテューション」は海洋環境保全の規制を改装によってクリアすることが困難と判断され係船されているようです。これでまた、懐かしい船が退役することになります。


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『めぐり逢い』

 レオ・マッケリーが監督した20世紀フォックスの1957年製作の「めぐり逢い」は客船を舞台とした映画の代表作品として有名ですが、実は同監督が39年に作った映画「解逅」のリメークです。

 前作はビデオテープの栞によると「ユーモアとペーソス、情熱とアンニュイに満ちたロマンティックなメロドラマとして高く評価され、アカデミー賞でも作品賞、主演女優賞など5部門の候補になった」そうです。不運にも「風と共に去りぬ」・「駅馬車」・「オズの魔法使い」などと競合することになったため何れも候補に終わってしまったようです。

 主演はアイリーン・ダン、シャルル・ボワイエです。アイリーン・ダンは「その雰囲気を“典雅”と評され、キャロル・ロンバート、ジーン・アーサーとともに30年代を代表する女優だった」とあります。私の生まれる前のことなので名前だけしか知りません。

 シャルル・ボワイエは「34年にフランスからハリウッドへ渡り、洗練された都会的魅力で女性ファンに圧倒的な人気を得たスター」と紹介されています。彼の映画は何本か見ました。但し、どの映画も物わかりの良さそうな、若い頃はハンサムだったのだろうと思わせる親爺役でした。

 前作の話はこのくらいにして本題に移ります。映画の舞台は当時地中海と米国東岸を結ぶ定期航路に就航していた「コンスティテューション」です。ローマ(チビタベッキア?)を出港した船上で、社交界で名の知られたプレイボーイ、ニッキー・フェランテと元歌手のテリー・マッケイは言葉を交わすようになります。それぞれニューヨークには婚約者が待っているという設定です。

 途中で寄港したフランス領の島でニッキーの祖母ジャヌーに逢った後、二人は互いに距離を縮めるようになります。そしてニューヨーク上陸の朝、二人は6ヶ月後にエンパイアステートビルの展望台で逢うことを約束して下船するのです。ここでのセリフが話の終端近くで効果的に活かされることになります。

 映画を見る前にストーリーを明かして仕舞うと興ざめとなるので詳細は省略しますが、劇中至る所でセンスの良いユーモアが鏤められていて、紆余曲折ののち爽やかな結末を迎えます。この映画の主演はニッキー・フェランテをケリー・グラントが、テリー・マッケイをデボラ・カーが演じています。何れも私の好きな俳優/女優の一人です。主役の二人の話の前に、この映画を引き立てているもう一つの要素、主題歌について触れて置きましょう。

 雪の降るニューヨークの街をタイトルバックに始まり、同じシーンでフィナーレとなりますが何れもあの懐かしい主題歌が流れています。特に冒頭のタイトルバックで歌うヴィック・ダモンのソロがとても印象的です。今の感覚からするとスローテンポですが、映画館で見てから30年以上経っている筈なのにビデオを買ってこのメロディを聴いて懐かしく思い出したものです。

 さて、主役の一人ケリー・グラントはジェームズ・スチュアート、グレゴリー・ペックなどと共に良く見たハリウッド俳優の一人です。先に取り上げたヒッチコック映画「泥棒成金」では美女の誉れ高いグレース・ケリーと共演していることはお話ししました。ヒッチコック映画ではほかにもオードリー・ヘップバーンと共演した「シャレード」とか、エバー・マリー・セントやジェームズ・メイスンと共演した「北北西に針路をとれ」などが思い出されます。

 びっくりした時の表情が目を剥いて非常に特徴があります。本人は意識してやっている訳ではなく自然にそうなるのだと言ってたと何かに書いてあったように記憶しています。本人はイングランド出身でイタリー人(ニッキー・フェランテ)には見えませんがこの映画では人種を意識するところはなく違和感は感じません。

 デボラ・カーに話題を移します。彼女の映画も良く見ました。ミュージカル「王様と私」でスキンヘッドのユル・ブリンナーとともに主役を勤めたことから判るように数少ない歌える女優の一人です。出演した映画ではモンゴメリー・クリフトと共演した「地上より永遠に」や、この映画と同じケリー・グラントと共演した「芝生は緑」などがあります。ジェームズ・ボンドシリーズにも出演したことがあるようですが私は見ていないと思います。この映画では主題歌をフランス語で歌うシーンと、歌手としてステージで歌うシーンがあります。適役です。

 この映画は、船旅を扱った映画の代表作ですが、実は船の出てくるシーンはそれほど多くありません。航行中のシーンは1ショットか2ショットくらいで、この他にコンスティテューションの姿が見えるのは寄港地でテンダーボートによる上陸時の映像と、ニューヨークで接岸時のシーン程度で最近のビデオや絵葉書のようないわゆる絵になるシーンはありません。

 船内のシーンも、テリーの部屋の一角、ダイニングの一部とそこへのエントランス、プロムナードデッキ、プール、階段の一部など限られた範囲でフェランテの部屋やその他の公室は画面に出てきません。

 この限られた映像から、当時のダイニングの装飾やデッキや手摺りの状態を見たり、キャビンの内装や丸窓のサイズを読みとったり、各ショットを撮影した場所や角度を同船の一般配置図から推測するのも客船マニアの楽しみの一つかも知れません。

 もし、映画を見たい方は下記宛問い合わせ戴ければ遠隔地の場合ビデオを紹介しますし、近所であれば出来る限り便宜を図る所存です。



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