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2. 船内配置の変遷

2.1 ホリゾンタル配置とバーティカル配置

 ホリゾンタル配置とバーティカル配置とは客船の船内一般配置において公室をどのように取り扱うかと言う方針である。ホリゾンタル配置とはデッキの特定のフロアに公室を集める方式で、バーティカル配置とはキャビンを前方に配置してダイニングやグランドホールなどを後部に集中する方式である。何れも長所と短所がある。

 バーティカル方式ではキャビンを振動や騒音の少ない前方に配置出来るメリットがある。NYKクルーズの「飛鳥」は典型的バーティカル方式である。ダイニングルーム「フォーシーズン」や「グランドホール」だけでなく「フォトショップ」や売店「アスカコレクション」、 「マリナーズクラブ」、「ピアノラウンジ」、「リドバー」などバーラウンジも全て各層の後部に集中しており、公室で船首方向に配置されているのはブリッジの上に設けられた「ビスタラウンジ」のみである。

 設計上は配線や配管、資材や従業員用のエレベータなどを集中できるなどスペース効率は良い。短所を挙げるならば、キャプテンの招待になるパーティのあとダイニングに移ってディナーとなるときなど、乗客の移動が滞る可能性があることである。「飛鳥」でもパーティ会場であるグランドホールから1層下のメインダイニング「フォーシーズン」に移動する際、多くの人がエレベータや階段を利用するので多少混雑することがある。

 同じくNYK系列であるクリスタルクルーズの「クリスタルハーモニー」や「クリスタルシンフォニー」はホリゾンタル方式を採用し、ティファニーデッキ(6デッキ)とリドデッキ(11デッキ)に公室を集中している。



《つづく》



 註:)冒頭に述べたようなマクロな検討にはこのような真の値を探索する必要はない。しかしながらこの調査の過程を経て今までなおざりにされてきた問題に今更ながら気が付いたのである。造船所の図面や諸元は一般に入手困難であり、一般刊行物には誤植の転載を含め多くの数値が氾濫しているため、特定船舶の特定時期の諸元を整理しておくことは地味な作業であり、個人の手に余ることではあるが今後の船舶の研究のためにも必要なことではないかと思い、データベース構築の提案をさせて貰おうかと思っているところである。内外の研究者の方々のご協力やご意見を賜れば幸甚である。

 余談ながら同じ様な船舶のデータベース構想は艦艇研究家の間でも提案されている。艦艇の場合、改装の頻度も程度も客船の比ではないので事情は良く理解できる。但し、商船・艦艇を含む全ての船舶となると賽の河原のように見通しが立たず、当面の研究には間に合わない。そこで私は1万総トン以上の「客船」に限定して実現の可能性のあるプロジェクトを提案したいと思う。1万総トンにたいした根拠はない。ただ、往年の名船「天洋丸」や「地洋丸」それに「浅間丸」や「秩父丸(鎌倉丸)」などは含めたいので2万総トンでなく1万総トンと提案している処である。

 このデータベースは私物化する積もりはなく、充実したら広く船舶研究家に活用して戴きたいと思っているので収集方法・データ項目など読者諸賢のご意見を戴ければ幸甚である。


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