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英国諸島巡航(第12部)



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1999年8月21日(土)ルーアンに向けて航行中 ドレスコード:フォーマル
今日は日本人乗客の希望者にブリッジ・ツァーが行われた。

9:30にクルーズスタッフのケイコさん(アクティビティ・ホステス:大杉敬子さん)の案内でブリッジにお邪魔する。

ダブリン出港時にも寄せて貰ったので、今回のクルーズで2度目となる。

ケイコさんはNCLからクリスタルに来て2年だそうだ。

このあと彼女はクリスタル・ハーモニーに移ったそうである。

チャートテーブルにはセーヌ川の海図が広げてあった。
勿論パリの空の下を流れているセーヌ河である。

日本で似た河を探せば、さしずめ石狩川が近いのであろうが石狩川の場合、氾濫を避けるためバイパスを整備して河の両側に三日月湖が残っている。

日本では広い平野がなく山が迫っているので、蛇行する余地がないのでこのように蛇行した河はない。

このクルーズの最終寄港地ルーアンはセーヌ河を上れるところまで上ったところにある。

河口のルアーブルからルーアンまでは直線距離で80キロ、河に沿って計ればその倍にはなろう。

今日はキャプテン・プレジデント主催のカクテルパーティが行われる。昼食はグランドガラビュッフェである。
ゲスト・シェフが腕を振るったグランドガラビュッフェの料理やデザートをビデオや写真に撮る人のために11:30から撮影のための時間が設定されていた。

クリスタルプラザ一杯に、大皿に盛り付けられて崩すのがためらわれるような料理がデザートや氷/瓜の彫刻などと一緒に所狭しと展開されていた。


デザートも様々なフルーツやケーキなど沢山用意されており、池に見立てた大きな盆には100匹近い蛙が鮮やかな緑で人目を引いていた。


ティファニーデッキではマニラ・トリオが演奏をして雰囲気を盛り上げていた。

クリスタルデッキでは、この日のために乗船して準備していたゲスト・シェフが質問に答えていた。


クリスタル・コーブの各テーブルにはナプキンが用意されており、ガラビュッフェで取ってきた料理をそこで仲間と楽しむことが出来るようになっていた。
ティファニーデッキからこの様子をビデオで撮っていたら、クリスタルダイニングでいつも楽しませてくれる我々のヘッドウェイター、ディディが目聡く見付けて手を振っていた。

我々もガラビュッフェを歩き回り、迷いながらお皿にとって乗船仲間と楽しく戴いた。


既に仮明細書も部屋に届いて、下船後の宿舎や航空券の予約など、現実世界に戻る準備でレセプションカウンターは段々と賑わってきた。

清算のためにカードを登録する人、明細書の内容を確認する人、ホテルや帰途の航空券を予約したり確認する人など、ここを訪ねる人は様々である。

2週間程度のクルーズでも、下船するときは結構荷物が増えているものである。

常用の車椅子を持ち込んでいる人も居る。

別便にしても携行にしてもスーツケースやこれらのバッゲージの一つでも間違って別の便に載せてしまうと大変なことになる。

特に下船の前は荷物の扱いに気を使うことであろう。

午後スターライトクラブで、楽しみにしていたミラー氏(William H. Miller,Jr.)の講演があった。
これを書いている私のデスクサイドにもドーバー社から出版された彼の著書がある。

"THE GREAT LUXURY LINERS,1927-1954 A Photographic Record"、"MODERN CRUISE SHIPS,1965-1990, A Photographic Record"、それにブレイナード氏と共著の "PICTURE HISTORY OF THE CUNARD LINE 1840-1990" などである。

勿論、初めてお目に掛かったのであるが、想像していたよりずっと若々しく、ずっと元気で、貴重なスライドを使って大きなジェスチュアで講演されていた。

グァンジー島寄港とともに、このクルーズで得た望外のプレゼントであった。

これも、同じ会場で行われたイベントである。
このクルーズで数回行われていたジャックポットビンゴである。
ビンゴのスタッフはギャラクシー・ラウンジでミュージカルショーなどを上演しているダンサー達であった。
日本人のモチヅキ青年を始め、ダンサーと言うかアクターは舞台での顔で判るのであるが、アクトレスや女声シンガーは舞台化粧が濃いので誰だかよく判らなかった。
クルーズ最後のビンゴなので積み立てを期待してか、参加者は多かった。
ここで我々に幸運が舞い込むとは思わなかった。
同室のJがビンゴを当てたのである。
モチヅキ青年が会場に紹介してくれた。
しかも、同時にビンゴになった人が居なかったので独り占めである。
レセプションに行って現金を受け取ったときはさすがに嬉しそうだった。

目的港入港前日なので、マーレンキャプテンとワッターズ社長の共催でカクテルパーティが開かれた。

いわゆるフェアウェルパーティである。

このときは主要スタッフの紹介のときに、夫人や子供達も紹介されたが、小さな子供がキャプテンの挨拶を食ってしまった。

制服のパパに抱かれて仕草が可愛かったヨチヨチ歩きのジュニアが、キャプテンのジェスチュアを真似して、会場はそれで受けてしまったのである。

キャプテンは天上を指した右手のやり場に困っていた。

ダイニングでは、ギャレーで働いているシェフ達が紹介されていた。

肉とか魚とか、デザート担当のシェフもいる。

今回私は参加しなかったがギャレーツアーも用意されていた。

ギャレーとは船の厨房のことで、何もしていないときに歩いても面白くなかろうと調理やその準備をしているところをエグゼクティブシェフが案内してくれるのである。

現在、船では電気で調理をするので、本格的中華のような火を使う料理は難しい。

ダイニングスタッフの紹介のとき、メートルディのウィドマーが連れてきていたジュニアを紹介したときのものである。

ウィドマー氏は2年前、メキシカンリビエラクルーズの時もメインダイニングのメートルディであった。

陸上のホテルのレストランで言えばレストラン・マネジャーである。

嬉しそうに息子を抱えあげ、メインダイニングのゲストに紹介していた。

これが、クリスタル自慢のベイクドアラスカである。

テーブルのウェイターのダレク氏が、炎の燃え盛る状態で減光したテーブルで披露し、照明が点灯されてから小皿に切り分けて持ってきてくれる。

ご婦人連に言わせると、クリスタルのベイクドアラスカは美味しいそうだ。

それにしても炎が高い。

今日も隣のテーブルでは、バースディかアニバーサリーか、風船が上がっていた。

この風船を目当てに、トリオがお祝いの演奏をしにダイニングを回るのである。

バースディとアニバーサリーは部屋のテレビでも繰り返し放送されている。

クリスタルの場合、年間スケジュールで世界中を運航しているので誕生日や日や結婚記念日を狙って乗船するわけには行かない。

それだけに乗り合わせて祝福されると嬉しいに違いない。

船はディナーの間も、ノルマンディ平野を流れるセーヌ河を静かにさかのぼっている。

ダイニングの窓から見ると土手の柳に手が届きそうであった。

河は大きく蛇行しているので、曲がりの内側は砂が堆積しているに違いない。

小回りの利く小さなボートが右に左に、前に後ろに、警戒しながら伴走している。

外は黄昏で東の空には朧月が出ていた。

行く手にライトアップされた斜張橋が見えた。

あとで地図を見ると、ノルマンディ橋らしい。

セーヌ河はルーアンまで外洋船舶が航行するので、これらの航行を妨げる橋は掛けられない。

それで両側の取り付け道路を持ち上げて斜張橋にしたものであろう。

ルーアンの接岸予定時刻は午前2時である。



入港するルーアンはフランスなので、イギリスとの時差を補正するため、夜中に時計の針を1時間進めることを忘れないようにしなくてはならない。