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英国諸島巡航(第10部)



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1999年8月19日(木)ウォーターフォード(ダンモア・イースト)着0800出港1800・ドレスコード:カジュアル(50’s)
爽やかな朝、船はアイルランド南東の主要都市ウォーターフォードの外港ダンモア・イーストの沖に到着した。

本船から見ると正面は高い崖が続いており、その上は芝生のきれいなゴルフ場になっている。

早くからテンダーボートが往復している。
上陸地点に配置のスタッフや、出発時刻の早いショアエキスカーションに出かける乗客を送っているのであろう。

上陸地点はダンモア・イーストと言う漁村である。

連続した崖から一部低くなって入り江となっている所に防波堤と小さな灯台が造られて、沿岸漁業の漁船の船溜まりになっている。

アイルランドの観光ガイドブックにも写真が載っていたが、ここにはゴルフ場のほか、こぢんまりとした海水浴場やヨットハーバー、それに当地でよく見かけるキャンピングカー用のキャンプサイトもある。
我が国では電気・上水道完備というサイトもあるようであるが、ここでは何もない草原である。この日も家族で来ているキャンピングカーが1台駐車しており、子供が近くの部落から水を貰って上ってくるのに出会った。

のどかな眺めに誘われて上陸してみた。

本船と上陸地点をテンダーボートが往復している。

ゴルフ場の崖の下では小さなヨットが沢山浮かんでいた。

遠景で良く判らなかったがヨットレースと言うよりも、少年のためのヨット教室と言った感じに見えた。

晴天で爽やかな風が吹いており、絶好のヨット日和である。

白く大きなクルーズ船が珍しいのであろう。近くの住民が子供を連れて防波堤に船を見に来ていた。

「何という船だ?」、「クリスタル・シンフォニーと書いてある。」と言う声が聞こえた。
近くの崖の上に無線用のアンテナを立てた小屋がある。漁業協同組合の監視所のような感じである。
おそらく、そこの人が双眼鏡で船名を読んで教えていたのであろう。

このシリーズの一部でも紹介したが、「危険」と言う標識はあるが、「立入禁止」の表示はない。
"Own Risk"の考え方が徹底しているようである。

漁業監視小屋の側から崖の下を見下ろしてみた。

洞穴の向こうから白波が押し寄せてくる、見るからにダイナミックな岩場である。

ここに座って飽きることなく海を眺めている男が居た。

沖をトロール漁船であろうか、2艘の船がゆっくりと南下していった。

漁業監視小屋と反対側のゴルフ場下の海面ではヨットのほか、船外機付きのゴムボートやシーカヤックで、短い夏を楽しむ人が居た。

メキシカン・リビエラで走り回っていたようなジェットスキーやモーターボートの曳くパラセーリングなどはここにはない。

大型遊技施設や絶叫マシンで遊ぶより、どれほど健康的であろうか?

夏場の自然を楽しむために遠くから来ている家族も多いに違いない。

ゴルフ場と海水浴場の間にあるヨットハーバーである。

この日も楽しそうに海に乗り出そうとしている人たちがいた。

ヨット教室で出ていたようなデンギーだけでなく、デイクルーザーも結構いるようである。

緑豊かな、いかにもアイルランドと言う眺めであった。

この写真はメモ用として持っていった小型サブカメラで撮ったものである。
穏やかな海、夏の雲、地元の親子の後ろ姿の醸し出す雰囲気が好きで、職場の職員作品展に出品した。

北大西洋定期旅客ライナーをご存じの先輩方のなかには「白くてベランダが並んでおり、アパートのようだ。」と厳しい意見をお持ちの方もいるが、クリスタル姉妹の外観は現役のクルーズ船のなかでましな方だと思う。
でも、最上層前部の展望ラウンジの辺りや、航跡の見えるリドデッキなどは同じNYK系列の「飛鳥」の方が好きである。

よく似たイメージから察せられるようにクリスタルと飛鳥の意匠デザインは同じデザイナー事務所によっている。

スロープを上った路傍から見下ろした漁港である。

遠景、ゴルフ場の向こうに延びているのはウォーターフォード港を囲うフック・ヘッドである。

その間のバーロー河を遡るとジョン・F・ケネディ・パークがあり、その河の右岸に流入するスイア河を上流に辿るとウォーターフォードに至る。

小型船ならウォーターフォードに接岸することが出来る。

ウォーターフォード市の中心部に近い、クライスト・チャーチ聖堂の内陣である。

ジョージ王朝時代に建てられた教会だそうである。

驚いたのは、日本から遙かに遠いこの聖堂の前に「世界人類が平和でありますように」と日本語で書いた杭が立っていたことである。

「 ったく、日本人と言うやつは・・」と言う声が聞こえてきそうな気がして辺りを見渡した。

町のなかに石造りの塔が建っていた。

レジナルド・タワーと言うバイキング時代の遺跡である。

地元の青年が解説してくれた。

ここウォーターフォードは西暦1000年頃構築された要塞があったようである。

12世紀に建てられたウォーターフォード城は河岸から専用フェリーに乗り、キングス運河を横切って行くのだそうである。

レジナルド・タワーのすぐ裏に、その名も「レジナルド」と言うパブがあった。

表に、ヨーロッパ連合と合衆国の旗が掲げられていた。

ショア・エキスカーションの一行はこの店に入ってティータイムとした。

中は先程見学した塔の中のような内装で、見掛けより収容人数は多い。

バスで来る観光客を想定して設計されたものらしい。

ちょうど時間的に、ランチタイムが終わってパブに模様替えする所であった。

いままでミートパイなど料理の並んでいたテーブルが、パタパタと畳まれて舞台の早変わりのようにバーカウンタになる様子が面白かった。

一人ならスタウトか何か貰うところであるが、皆さんがコーヒーや紅茶を頼んでいるので、紅茶とスコーンを頂くことにした。

店を出て振り返ると、夕方のメニューを掲示している所であった。

英国で面白いと思ったのは、レストランでもパブでも、曜日毎に営業時間が細かく表示されていることである。
月曜日と火曜日で開店時間もラストオーダーの時間も同じとは限らないのである。

現地のガイドは大きな土産物屋を待ち合わせ場所に指定していた。

そこで観光客は土産物を買って、バスに乗ることになる。

何だかうまいシステムである。

ウォーターフォードの出港時間は18:00である。

英国では夏の日が長い。この日の日没は20:43であり、浜辺ではまだ楽しそうに遊んでいた。

出港時間間際に2艘のシーカヤックが本船に近づいてきた。
浜からは相当に沖合に錨泊している本船に別れの挨拶に来たのかも知れない。

にこにこと手を振って浜に戻っていった。

明日は、当初の予定では航行日であったが、クルーズ開始後チャンネル諸島のグァンジー島(セント・ピーター港)に寄港することになった。